大ヒットアニメ映画『君の名は。』(新海誠監督)が、ハリウッドで実写映画化されることが発表された。新海監督本人からはリメイクに期待するコメントが出ているが、
アニメファンや映画ファンの間では、期待よりもむしろ、いわゆる“原作レイプ”を不安視する声が広がっているようだ。英米メディアでは特に、人種差別問題が絡む
“ホワイトウォッシュ”(キャストが白人俳優ばかりで固められること)を懸念する声が上がっている。

◆前2作に続く“ホワイトウォッシュ”か?
 先月28日、米パラマウント・ピクチャーズと『スター・ウォーズ』シリーズを手がけるJ・J・エイブラムス氏の制作会社バッド・ロボットが『君の名は。』の実写映画化権を
獲得したと発表された。監督・プロデューサーにエイブラムス氏、脚本家にSF映画『メッセージ』などで知られるエリック・ハイセラー氏の名が挙がっている。原作プロデューサーの
川村元気氏も制作に関わるようだ。

 キャストについては具体的な名前は出ていないが、英ガーディアン紙は、「J・J・エイブラムスの『君の名は。』のリメイクがハリウッドの“ホワイトウォッシュ”の不安を呼ぶ」という
タイトルの記事を掲載。今作も、これまでの日本原作のハリウッドリメイク同様、オール白人キャストになる可能性が高いと指摘している。ハリウッドの外国映画のリメイクでは、
客を呼べるスター俳優のほとんどが白人であるため、主要キャストが白人に置き換えられることが多い。米国などではこれが“ホワイトウォッシュ”と呼ばれており、人種差別的だと批判されがちだ。

 ガーディアンや米フォーブス誌は、日本アニメ原作の“ホワイトウォッシュ”の最近の例として、揃って『ゴースト・イン・ザ・シェル』(攻殻機動隊)と『Death Note/デスノート』を挙げる。
人種問題を差し置いても、原作ファンからは原作イメージを大きく損なうリスペクトを欠いた“原作レイプ”だという批判も多い。

◆“日本アニメ嫌い”がお金のために無理やり実写化?
 ガーディアンは、『ゴースト・イン・ザ・シェル』『Death Note/デスノート』のホワイトウォッシュぶりを、「スカーレット・ヨハンソンをヒロインにキャスティングした攻殻機動隊は冷笑を誘った。
デスノートでは、舞台を東京からシアトルに変えてほぼオール白人キャストとなった件で、監督のアダム・ウィンガードが批判の火消しをすることを余儀なくされた」と表現する。

 フォーブスの記事を書いた日本のゲーム&ポップカルチャー・ウォッチャーのオリー・バーダー氏は、『ゴースト・イン・ザ・シェル』を「ホワイトウォッシュ議論を横に置いても、映画そのものが
単純にひどかった」と突き放す。「『君の名は。』は根本的に日本的な特徴づけがされており、日本文化と大きく交わっている」と語る同氏は、キャストの面だけでなく、物語の背景と映像に
貫かれている日本文化や、主人公たちのやりとりに見られる日本的な機微が失われることを懸念する。

 バーダー氏は『君の名は。』のハリウッドリメイクを「むしろ残念なニュース」だと捉えていると言う。特に『ゴースト・イン・ザ・シェル』を配給したパラマウントへの不信感は相当なものだ。
同氏は、パラマウントはそもそも日本の漫画とアニメを嫌っているにもかかわらず、金になるからとヤケクソ気味に次々と実写化していると見ている。そうした原作愛のない姿勢は今回も
変わらないだろうから、『君の名は。』も駄作になるのは決定的だというわけだ。対して、同じアメリカの配給会社でも、コミック文化や漫画・アニメに造詣が深いスタッフがいる会社は
「良い仕事をしている」と同氏は指摘する。

https://newsphere.jp/culture/20171004-3/