巨人も阪神も…早実清宮におもねるプロ球団の“大人の事情”

「もしも、ドラフトで1位指名する球団の話を聞きたければ、自分たちからお願いして球団に出向くべきです。球団を自分らの都合で呼び出すというのなら筋違いですよ」

 こう言うのはプロ野球ファンの作家・吉川潮氏だ。

 去る22日、会見でプロ志望を表明した早実の清宮幸太郎内野手(3年)。いつしか清宮サイドが獲得を希望する球団と面談を行うという話が浮上し、
ラグビーのヤマハ発動機で監督を務める父親の克幸氏が「タイミングが合えば」とプロ球団との話し合いに同席する意向を示した。

 それでもプロ側の“清宮フィーバー”はヒートアップする一方。清宮がプロ入りを表明したその30分後、阪神の四藤球団社長が真っ先にドラフト1位指名を公表。
巨人も翌日にスポーツ報知が「1位指名で一本化する方針で動き出した」と報じた。ソフトバンクは早実の先輩である王貞治会長(77)が「欲しい」と1位指名を明言している。

 ドラフト史上、1位指名が最も競合したのは1989年の野茂英雄と90年の小池秀郎の8球団。王会長は以前、「清宮本人がプロに行くと宣言すれば、11球団は(1位で)いくんじゃないか」と言ったことがある。
野茂や小池を上回る可能性を示唆した上に、阪神にいたってはスポーツ紙上に「できるだけ彼の希望はかなえたい。大リーグは彼の夢。ポスティングシステムを希望するなら検討することになるだろう」という球団幹部のコメントが載った。

 清宮人気は過去最高だとあおり、ドラフトで当たりクジを引く前から球団幹部がポスティングによるメジャー挑戦を検討してもよいと“秋波”を送る。清宮サイドに対し、プロ側は媚びへつらっているのだ。

■競合を減らす

 そもそも、今から清宮はすごい、すごいと、1位指名を公表する必要があるのか。

 プロ野球の球団経営に関する著書もあるスポーツライターの工藤健策氏はこう言った。

「例えば、人気球団の巨人や阪神に若手大砲は育っていない。特に早実のある東京がホームの巨人は、清宮君を1位で指名せざるを得ない。もしも1位でいかなければファンの反感を買いますよ。
阪神にしても元甲子園のスター選手で高校通算111本塁打の長距離打者は魅力。清宮1位を認めているのはファンを意識してのこと。ソフトバンクの王会長にしてみれば、早実の後輩で同じ左の大砲ですから『欲しい』と言わない方がおかしいでしょう」

 在京球団のさる編成担当者は「あえて1位指名を公表して、他球団に手の内を明かす必要はありませんけど、公表することによってひとつでも競合球団を減らそうという思惑はある」と話す。

■嫌われたくない

 だが、交渉権もないうちからポスティングを容認するかのような発言までして清宮におもねっているのはなぜか。

「どの球団も清宮サイドから、おたくにだけは行きたくないと言われたくない。要するに嫌われたくないのですよ」と前出の編成担当者がこう続ける。

「清宮が今後、逆指名してくることはおそらくない。意中の球団があるとしても、それが公になれば自身のイメージダウンにつながる。ただ、今後の面談なり、交渉過程において、指名しないでもらいたいと言われる球団が出てくる可能性はあります。
どの球団も、それが怖いのです。担当スカウトやフロントの責任問題に発展するどころか、球団にとっても大きなダメージになりますからね」

>>2-5あたりに続く)

日刊ゲンダイDIGITAL 2017年9月28日
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