■プロ野球ドラフト会議で上位指名に食い込んでくる逸材も  

注目の2大打者が苦心惨憺する中、中村がてこずった木製バットへの対応も問題なく、大会を通じて本来の力を発揮していたのが、安田尚憲(履正社)。
本塁打こそなかったものの、9試合で34打数11安打5打点を挙げ、アベレージは.324。
出塁率.452は十分、主軸の役割を果たしたと言える。
「安田は清宮や中村に比べて、速い変化球に一番対応できていた。
引っ張ったり、逆に打ったり、広角に打ち分けられていたな。長打は打てないが、3番タイプになれる可能性がある」

同じく、清宮や中村より目立ったのは、投手登録でありながら今大会は外野手、DHとして出場し、
27打数9安打、打率.333を残した櫻井周斗(日大三)。
そして、2人の2年生選手、小園海斗(報徳学園)と藤原恭大(大阪桐蔭)である。
小園は37打数14安打、打率.378は、今大会の日本人選手でトップの成績だ。
藤原も、36打数12安打の.333と好調だった。「膝を柔らかく使って、低めの変化球に対応していたわ。

来年のドラフトでは、上位指名の候補に食い込んでくるやろうな」

一方、今年のU-18日本代表で「例年よりも弱い」と言われていた投手陣だが、蓋を開けてみると、意外と頑張りが目立った。
特筆すべきは、田浦文丸(秀岳館)。米国、キューバ、オランダ、オーストラリア戦で火消し役として活躍し、日本代表の中で唯一、ベストナインに選ばれた。
とはいえ、伊勢氏の採点は全体的に厳しい。
「目立った投手がいなかったな。きめ細やかにきっちりと放れる、コントロールのいい投手がいなかった。強いて言えば最終戦で投げた三浦銀二(福岡大大濠)かな。
スタミナがどうかやけど、面白いと思うよ。でも、この子も進学か……。大学にいたら潰されるよ。
勉強せんで金も稼げるから、将来プロに行きたいなら、早く入ったほうがいいと思うな」

投打の両面で見せつけられた、世界の壁。日本野球が世界と戦っていくためには、何が必要なのだろうか。
「今の147〜8キロ以上の速い球に対応するには、バッターはスイングを速くするのが第一。低めの速い変化球は、追い込まれるまで捨てる。
とはいえ、並行して打てるように練習をする必要もある」

続いて、投手の場合は、「日本人ならではのコントロールのよさを守りつつ、速い変化球を覚えるべき。
ストレートが143〜4キロなら、ツーシームも140キロそこそこないとダメ。日本のピッチャーは、あまりに“きれいなストレート”すぎる。
それじゃ打たれるし、そのうえ、ツーシームが130ナンボじゃ、世界で通用せんわ」

■日本は韓国にもう勝てない!?  

こうした“ツーシーム時代”への対応を、すでに海外のライバルたちは終えているという。
「アメリカはもちろん、韓国もとっくに、そうやって若い選手を育てている。今、日本のプロチーム対韓国のプロチームなら、まだ日本が勝つやろうけど、
オールジャパンとオールコリアだと、もう勝てない。10回やったら負け越すと思うわ。
日本でも、新しい時代の野球をリトルリーグ、シニア、高校、大学、社会人と教えていかないといけない。
昔の指導法のままだと、いけない。ツーシームやカットなどの早い変化球、この球をどう打てるようにするか、これがワシの死ぬまでの課題や」

このままでは、世界との差は開くばかり。伊勢氏の提言のように、“新時代”に対応する指導法の確立が急がれる。