金属バットから木製バットに変わり、その対応に苦しんだとも言われているが、はたして日本代表の打棒を阻んだものとは何だったのか? 近鉄、ヤクルト、巨人などで打撃コーチを務め、多くのスラッガーを育ててきた名コーチ・伊勢孝夫氏が解説する》

 まず印象的だったのが、日本の各打者が外国人の投手のツーシームに対応できなかった点だ。アメリカはもちろん、カナダ、韓国の投手もツーシームを投げていた。日本でも、最近の高校生はツーシームを投げる投手がいるようだが、同じツーシームでも、国際大会に出てくるような投手は、球速が140キロ台後半と威力が違う。

 技術的なことを言うなら、ツーシームに対応するには、前足(ステップする方の足)のヒザを柔らかく使うことだ。言葉にするのは難しいが、動く変化球の多くはヒザ元から低めに落ちる。その軌道にバットを合わせるには、ヒザを柔らかく使わないとボールを捉えられない。

 プロの世界では「ボールは前足で捕まえる」という言葉があるほど、バッティングにおいて前足は重要なポイントである。10人打者がいれば、10通りの構えやスイングがある。しかし、”前足で捕まえる瞬間”というのはみんな一緒なのだ。バットにボールが当たる直前のシルエットといえば、理解してもらえるだろうか。

 これは高卒であれ、大卒・社会人であれ、アマチュアからプロに入ってくる打者が最初にチェックを受ける、いわば関門のようなものだ。この形がしっかりできている打者は、プロのボールに対応できるということで、まずは第1関門通過ということになる。巨人の坂本勇人は、1年目からこの形ができていた代表例だろう。

 残念ながら、今回の日本代表にそれができている選手は少なかった。唯一高いレベルでできていたのは、大阪桐蔭の藤原(恭大)くんぐらい。彼はスラッガーが並ぶ打線のなかで、自分の役割をしっかり理解し、出塁することに徹底していた。だから、長打の意識を捨て、広角に打ち分けていた。あれを強振してしまうとファウルになるのだが、藤原くんはヒザを使いながらうまくミートし、ヒットを重ねていた。まだ2年生らしいが、来年が楽しみな選手だ。

 安田くんはまずまずできていたが、清宮くんや中村くんは、正直厳しいと言わざるを得なかった。清宮くんはホームランを放ったが、その打席もヒザでボールを捕まえる形になっていなかった。

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