■あの人はいま 元鹿島アントラーズ 柴崎岳さん(26歳)

2018年、ロシアW杯。 それを、TVで見つめる男がいた。
24歳でレアル相手に2ゴールを決めスペイン二部テネリフェへ移籍した、柴崎さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する柴崎は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。CWC決勝でレアル相手に、俺が2ゴール決めた時の夢を」
不安障害と下痢でわずか半年でテネリフェを退団後、ハノーファーへ加入するも、出場機会は叶わず、わずか3カ月で退団した。
その後、古巣の鹿島アントラーズに復帰するも、故障がちになり、
若手や新加入選手の台頭に押され目立った活躍はできず26歳の若さで引退を決意。
今は青森郷土料理屋を営む傍ら、地元の少年サッカーのコーチを勤めている。

●暖簾の屋号の文字は元鹿島アントラーズ石井監督の手によるものだ
「いらっしゃ?い」。大洗鹿島線鹿島スタジアム駅から歩いて45分。
「青森郷土料理 GAKU」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると、白いタオルを頭に巻いた柴崎さんと妻、美玲さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『GAKU』という文字は石井監督に左手で 書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった
おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「せんべい汁好きは飛行機に乗って本場・青森県まで食べ歩きに出かける時代でしょ。
ボクが修業した青森の老舗『せんべい汁のつくだ』の汁は白味噌がベースなのが特徴だから、
醤油ベースがせんべい汁だと信じ込んでる関東人にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつての同僚で現レアル・マドリーの鈴木優磨や、バレンシア所属の土居聖真ついて尋ねると……
「あいつら俺より下手やったんですけどね(笑) 」と、おどけ 「環境に馴れるのも才能だと思いました」
「メンタルさえ弱くなければ…歯がゆいですけど。」 「今はもう現役に未練はありません。今度は、教え子でバロンドールを狙いますよ(笑)」

(写真)せんべい汁を手に持つ柴崎さん