◆アジアの選手の獲得は収益増につながる
 
地域との密接な関係を重視しながら、さらに海の向こうのアジアに目を向けているクラブもあります。ベトナムの英雄的ストライカー、レ・コン・ビンや、
“タイのメッシ”の愛称を持つチャナティップを獲得した北海道コンサドーレ札幌、あるいは“ベトナムのメッシ”ことグエン・コン・フオンを補強した水戸ホーリーホックなどが好例です。

札幌がレ・コン・ビンを獲得したのとほぼ同じタイミングで、クラブのスポンサーであるサッポロビール株式会社がベトナム進出を果たしました。
ベトナムのファンたちは母国の英雄が所属するクラブ、札幌のユニフォームに掲出されているサッポロビールの存在を知り、ベトナムにおけるサッポロビールの売上は一気に伸びたそうです。

サッポロビールが北海道コンサドーレ札幌のスポンサーを務めるメリットを大いに感じたのは間違いなく、その手応えは以降の両者の関係性にも良い影響を与えたはずです。
グエン・コン・フオンを水戸が獲得した際にも、クラブは国営ベトナム航空とスポンサー契約を結ぶことができました。

もちろんアジアの選手の獲得は戦力補強の目的が一番大きいですが、広告料収入の増加といった副次的な効果も期待できます。ベトナムやタイからファンがスタジアムを訪れてくれることで入場料収入増にもつながります。

アジアの選手と契約することは地域の観光産業や行政の活動にもプラスの効果があり、実際、水戸がグエン・コン・フオンと契約を交わした際には、
ベトナム航空がハノイと茨城空港を結ぶチャーター機を初めて運航しました。茨城県や水戸市がクラブから受けた恩恵は決して小さくなく、行政と良好な関係を築くことはクラブビジネスメリットにもつながっていきます。

このように、各クラブとも増益増収をめざし様々な施策を講じています。今年の例で言うと、5月にサガン鳥栖が、観客が自由に金額を決められる
「第1弾 一夜限りの『値段のないスタジアム』チケット販売」というアイデアを実施しました。

ファンづくりの第一歩としては様々な方にスタジアムに足を運んでもらうのが定石ですので、鳥栖の挑戦は一定の評価が与えられるべきでしょう。
クラブの野心的な取り組みが広く知れ渡ったことで、広告宣伝効果は十分なものになったはずです。

\教えてくれた人/
山下修作(やました・しゅうさく)さん
株式会社Jリーグマーケティング専務執行役員。北海道大学大学院修了後、株式会社リクルートで営業、編集、企画、WEBメディアのリニューアル、
プロモーション、マーケティングなどに携わる。2005年からJリーグ公認サイト『J’s GOAL』の運営やJリーグのWebプロモーション事業などにかかわった。Jリーグアジア戦略室室長や国際部部長を経て、2017年4月より現職。

写真
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