そして、25年間が楽しい出来事ばかりではなく、迷いながら日々を重ねてきたのは、このツアーに集まった70万人、一人ひとりの人生にも当てはまることだろう。25年経った今も、大勢のリスナーの前で大好きな音楽をやり続けられていることにMr.Childrenが「感謝」を表し、オーディエンスはそれを「祝福」すると同時に、そこに集まった一人ひとりが、いろんな苦楽を乗り越えてきたうえで今日という日に身体も心も活発に動かせていることを、Mr.Childrenの25年間の歌が「祝福」し返しているかのようだった。

■「肯定の仕方」が年々変化していることに気づかされる

しかし、25年間の歌が並べて歌われると、肯定の仕方、上手くいかないことや世の中の不条理を受け入れる術の伝え方が、年々変わっていることに気づかされる。中盤では1993〜1994年のシングルがリリース順に歌われたが、当時の曲からは<傷つけずには愛せない>(“CROSS ROAD”)、<様々な角度から 物事を見ていたら自分を見失ってた>(“innocent world”)、<今より前に進む為には 争いを避けて通れない>(“Tomorrow never knows”)など、世の中を否定的に捉えてしまう視点が前面に出るなかで、「それでも」なんとか前に進もうとする姿勢が見てとれる。

その後、この日桜井による弾き語りで演奏された1999年発表の“Simple”は、若さゆえの混沌とした感情が削ぎ落されて、「探してたものは歌い続けるという、シンプルなものだったんだ」といった、幸せとはごくシンプルなものであることを歌っているように聴こえたし、その翌年リリースされたアルバム『Q』の1曲目であり、ツアーの1曲目でもあった“CENTER OF UNIVERSE”では<総ては捕らえ方次第>と、あらゆる出来事の良し悪しは自分の視点次第で変わることを歌い、<あぁ世界は素晴らしい>と言い切っている。そして、ツアーの本編最後に歌われた2008年発表の“エソラ”では、楽しいことには終わりがくるとわかっていても憂う必要はないと歌い、最新曲“himawari”では<優しさの死化粧><暗がりで咲いてるひまわり>など、相反すること、矛盾することに宿る美しさを歌っている。

ときの流れとともに表れている歌詞の変化は、時代や世相を敏感に感じ取る桜井の目線と、メンバー自身の年齢による変化の両方が相まって生まれているものなのだろう。

■最後は、まだまだこの先も続いていくことを示した

ライブの最後は、「これまで過去の曲をたくさんやってきたけど、最後のこの曲だけは僕らにとっての、みんなにとっての、ただただ未来だけを見据えてやりたいと思います」と言って、“終わりなき旅”で締めくくられた。Mr.Childrenにとっても、70万人の一人ひとりにとっても、もっと大きなはずの自分を探す旅は、この先も続いていく。(テキスト:矢島由佳子)

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