連係を重視するメキシコのスタイルは、日本人選手の肌にも合いそうだ。

先日のサウジアラビア戦では今ひとつの出来だった本田圭佑だが、自身は今季よりメキシコの強豪パチューカに新天地を求めた。これまで日本人選手が海外クラブに新天地を求める場合、「ヨーロッパ」がいわばファーストチョイスだったが、これをきっかけに北中米も新たな選択肢となり得るのか。メキシコ・サッカーの特徴も含めて、サッカーライターの清水英斗氏に見解をいただいた。
 
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 中堅クラス以上の日本人選手が北中米のクラブへ移籍するのは、慎重になったほうがいい。なぜなら、MLS(メジャーリーグサッカー)をはじめとした北中米のサッカーは、基本的にフィジカルが重視されるため、そのスタイルに日本人選手がフィットするのは簡単ではないからだ。
 
 もちろん、身体は小さくても、日本人らしい繊細なテクニックを生かし、助っ人としての独自性を発揮できるところまでいければ逆に重宝されるかもしれないが、そこまで到達するには時間がかかる。若手が、数年間プレーする覚悟でチャレンジするのならいいが、ある程度、完成された中堅・ベテランが行くのは、やはりリスクが大きいと思う。
 
 ただし、北中米の中でもメキシコだけは話が別だ。この国は、他とスタイルがまったく異なる。
 
 メキシコのサッカーは技術力がベースで、戦術的にもかなり繊細だ。今年6月のコンフェデレーションズカップに出場したメキシコ代表を見ても、彼らは3バックと4バックを併用しつつ、自在にポジションチェンジを繰り返しながら相手ゴールに迫っていた。なにより驚かされたのは、その連係のスピードだ。
 
 以前、メキシコのクラブで指導をしていた日本人コーチに聞いたことがあるが、あのポジションチェンジの速さは、瞬時の判断ではなく、オートマティズムによってもたらされているものらしい。トレーニングで「型」を反復練習し、オートメーション化された一つひとつのパターンを、選手の頭と身体に染み込ませる。だからこそ彼らは、スピード感溢れるコンビネーションで敵を混乱に陥れることができるのだ。日本人はこうしたサッカーに合うのではないかと思うが、なにぶん実例が少ない。今回の本田圭佑のパチューカ移籍が、いわば試金石になるだろう。

つづく

9/8(金) 6:00配信 サッカーダイジェスト
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170908-00029504-sdigestw-socc&;p=1