この夏、新たにJリーグに加わった外国人選手と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、やはりルーカス・ポドルスキ(ヴィッセル神戸)だろう。ヨーロッパの強豪クラブを渡り歩き、ドイツ代表でも活躍。そのキャリアはワールドクラスの選手と呼ぶにふさわしいものだ。

 しかし、ピッチ上のポドルスキが前評判にかなった活躍を見せているかというと、残念ながら疑わしい。周囲との連係が合わずに孤立し、苛立ちを見せることも少なくない。看板倒れと見切ってしまうのは時期尚早だろうが、少なくとも現段階で言えば、期待に応えているとは言い難い。

 さて、その一方で、「意外な」と言っては失礼かもしれないが、この夏に加わったばかりの新顔ながら、スタンドの目を引きつけている外国人選手がいる。

 コンサドーレ札幌のMFチャナティップである。

 チャナティップは、昨年1月に行なわれたアジアU−23選手権(兼リオデジャネイロ五輪最終予選)にタイU−23代表として出場したのをはじめ、年代別代表で中心選手として活躍。まだ23歳ながら、現在はタイ代表で攻撃の軸を担っている。もちろん、9月5日まで行なわれていたW杯アジア最終予選にも出場していた。

 その最終予選を見てもわかるように、タイは日本に2戦2敗。実力的にタイは日本に劣る。いかに代表チームのエース格とはいえ、所詮はタイ代表でのこと。Jリーグ、それもトップリーグであるJ1でどれほどやれるのか。韓国やオーストラリアからやってくる選手に比べれば、その力に対して懐疑的な見方は、当然あっただろう。

 過去、同じ東南アジアのインドネシアやベトナムからもJリーグにやってきた選手がいたが、話題先行の感が強く、さしたる活躍もできずに帰国するケースが続いたことも、そんな見方を強くしたに違いない。

 しかし、チャナティップはレベルが違った。

 今年7月、新たなに選手登録されると、リーグ戦ではJ1第19節の浦和レッズ戦で先発デビュー。2−0の勝利に貢献して以来、6試合連続出場中だ。

 しかも、ただ出場しているだけではない。試合を重ねるごとにボールに関わる回数が増え、もはや札幌の攻撃の中心には彼がいる、と言っても大袈裟ではないほどだ。

 タイミングよくスペースを見つけてパスを受け、前が空けばドリブルで仕掛け、相手がドリブルを警戒してくれば、フリーになっている味方を見つけて効果的なパスを出す。決して独りよがりになるわけではなく、チームのなかで自分の長所を発揮することができている。158cmという小さな体から放たれる存在感が、日に日に強まっていることは間違いない。札幌の四方田修平監督が語る。

「彼のよさであるテクニックを生かして、相手の守備ブロックのなかでボールを展開したり、スピードを生かして局面を打開したりする。そういうことがJ1のなかで出せている」

 当然、チャナティップ本人も手応えを感じているようで、「タイにいたときよりもコンディションはいい。やっているうちに、どんどん慣れてきた」と、幼さの残る顔をほころばせ、うれしそうに話す。

 現在、降格圏(16位)とは勝ち点3差の14位にいる札幌にあっては、相手にゲームを支配されてしまう試合も少なくない。当然、そのなかではボールに触れる機会も少なくなり、本来のテクニックを発揮できない展開に陥ることもある。

「やはりサッカー選手は、ボールがないとつまらない。『(日本語で)ボール、チョーダイ。チョーダイ』という気持ちになる」

 これまでのキャリアにおいては、常にチームの大黒柱としてプレーできたであろう背番号18は、冗談めかしつつもそう語り、少なからずフラストレーションがある様子をうかがわせる。だが、それでも「一番大切なのは信頼」と言い、「みんなに信頼されていないと、ボールはこない。認められるように、毎日がんばる」と、あくまでも前向きだ。

つづく

9/8(金) 8:00配信 sportiva
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170908-00010002-sportiva-socc