エールが野次に変わった時、アスリートとサポーターの関係も大きく変化し得る。韓国代表キャプテン、キム・ヨングォンに続いてイスラエル代表の闘将もまたサポーターとの“衝突劇”を繰り広げている。

「応援の声が騒々しくて、試合中の選手間コミュニケーションが困難だった」。これは先月31日にソウル・ワールドカップスタジアムで開催された韓国vsイランの試合後に発せられた前者主将によるコメントだ。負けが許されないアジア最終予選で熱のこもったエールを続けていたサポーターに対し、決して誠意に満ちているとは言いがたい感想を述べたヨングォンはその後に謝罪。「頭が混乱し、言葉を間違えた。応援してくれたファンには謝りたい」と述べ、事態の収束に努めたが、運命の最終節に向けて大きく水を差す結果となったことは言うまでもない。

そして、遠く離れたイスラエルの地でも似たような軋轢が生まれている。2日にホームでマケドニア代表と対戦したイスラエル代表のキャプテン、エラン・ゼハビは4日、ファンからの執拗なブーイングと野次を理由に代表からの引退を表明。同試合中には怒りのあまりキャプテンマークを地面に叩きつけるという行為に及んでいた。チームへ懸命にエールを送り続けた韓国サポーターとは異なり、イスラエルサポーターは代表チームで本来の力を発揮できないゼハビへ集中砲火。「我慢の限界だ。この国はアスリートへの敬意を知らないね。ファンが自国をブーイングするなんて地球上でこの国くらいだよ」と母国紙『Yedioth Ahronoth』へその怒りを露わにした。

スタジアムの熱狂的な歓声によって意思伝達の困難さを味わうのは決して稀有な出来事ではなく、キム・ヨングォンがその苦労と戦う唯一の人間でもない。過去には2010年の南アフリカW杯で全ての参加プレイヤーが“ブブゼラ”という現地特有の風習と上手く折り合いをつけながら素晴らしい熱戦を披露した。また、クリスティアーノ・ロナウドはそのキャリアにおいて幾度と無く非情な野次と戦い、現在の屈強なメンタルを培っている。

もちろんキム・ヨングォンやゼハビが多くの困難に苦しめられてきたことは事実だが、サポーターと選手間で問題が生じた時にこそ、主将がその振る舞いで“一発回答”を提示すべきだろう。

そして、明らかに言うまでもないが、フランクフルトでチーム事情に応じながら様々なポジションを受け持ち、いつ何時においてもチームの為に身を犠牲にする覚悟に満ちた“日本の17番”は、改めてサムライブルーが誇るべき偉大な船長だ。韓国やイスラエルにも、すべてを一枚岩にする屈強なリーダーが誕生することを願いたい。

9/5(火) 17:30配信
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