英パフォームグループで動画配信サービスを手掛けるDAZN(ダ・ゾーン)は29日、日本でのサービス開始から1年で会員数が100万人を超えたことを明らかにした。ジェームズ・ラシュトン最高経営責任者(CEO)は都内で開いた記者会見で、「日本でのビジネスは計画通りに拡大している。有名な小売店ブランドなどと協力関係を模索していきたい」と述べ、スポーツファンを軸にした「DAZN経済圏」の拡大にも意欲を見せた。

 DAZNは1年前に日本市場に参入し、Jリーグと10年間で総額2100億円の独占配信権も契約した。ラシュトン氏はJリーグとの関係強化を訴え、高額契約のほかにも広告キャンペーンなどに10億円超を投資し、Jリーグ観戦者が前年比10%増加したなどの効果を強調。そのうえで「日本のスポーツへの参加や興味を伸ばしていきたい」と述べ、将来の視聴者にもなるスポーツファン拡大に向け、草の根レベルから日本のスポーツ振興を支援していく方針を示した。

 また、日本のスポーツコンテンツの海外展開の成果も示した。サッカー元ドイツ代表でヴィッセル神戸に移籍したルーカス・ポドルスキ選手が7月にJリーグデビューしてから、ドイツでのJリーグ視聴時間は約8倍に増えたという。

 DAZNのビジネスは拡張性もある。同社の扱うコンテンツはサッカー以外にも野球、格闘技、テニス、モータースポーツと幅広い。わずか1年で100万人のIDを持った強みを生かせば、異業種と組んだデジタルマーケティングにも使える可能性があるからだ。

 実際、ラシュトン氏は会見で、Jリーグや日本参入時から協業するNTTドコモ以外にもパートナーを増やしていく考えを強調。小売店ブランドなどが新たな相手になる可能性を指摘したが、具体的な話までは踏み込まなかった。将来はスポーツ愛好者が集まる「DAZN経済圏」を広げ、スポーツグッズや健康サービスなどを展開することもありそうだ。

 一方で課題もある。テレビでも見られる点がまだ知られていない点だ。実際はネット接続するスマートテレビや、セットトップボックスとのセット利用でテレビでも視聴できるが、Jリーグの各チームには「なぜテレビで見られないのか」との問い合わせがあるという。

 日本の視聴時間を端末ごとに分析すると、スマートフォン(スマホ)が34%、パソコン33%に対し、テレビは18%。テレビの比率はドイツなど他国に比べて低いという。DAZNはスポーツ中継が長時間になるため、目が疲れにくいテレビの方が向いているとみているが、現状は取りこぼしが多い。DAZNは「スカパー!」などのテレビの有料チャンネルからJリーグなどのコンテンツを奪った格好になり、従来のサッカーファンがスムーズに移動できなかった面もある。

 DAZNは、サッカークラブ同士の戦いの最高峰である欧州チャンピオンズリーグ(CL)を2018年から日本で独占配信する権利を獲得するなど、日本でのビジネス拡大にまい進する。ファンの裾野を広げるためには、スマホの動画配信に慣れた若者層以外に、テレビ重視のスポーツファンの支持を集めるかも重要。ファン層が広がれば、国境を超えた異業種連携のパートナーの選択肢が増える好循環に入りそうだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29HSN_Z20C17A8000000/