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外国人に「日本はすごい」といわせるテレビ番組が目立つ。しかしそれは物事の一面でしかない。NHKの新番組では、各地の外国人街を訪れ、そこで暮らす人たちの家に泊めてもらいながら、「異国」での苦労を描いている。その内容を、ライターの西森路代さんは「日本に横たわる現実に目を向けた番組」と評価する。体裁は「楽しいバラエティ番組」だが、じっくりみると深刻な問題に踏み込もうとしているのだ――。

 いま、テレビ番組で「人についていく」系の企画が目立つ。有名どころは『家、ついて行ってイイですか? 』や『YOUは何しに日本へ? 』(ともにテレビ東京)だろう。『家、ついて行ってイイですか? 』は、町中で終電を逃した人に声をかけ、タクシー代を支払って家までついていく番組だ。『YOUは何しに日本へ? 』では、成田空港に到着した外国人旅行客に来日の理由を尋ね、その目的を果たすまで密着する。いずれも、普段接することのない人々の生活を垣間見られ、自分とはまったく違った文化の中で生きている人たちを知ることができる興味深さがある。

 今回紹介する『体感ドキュメント 日本の異国にホームステイ! 』(NHK)も、そんな企画のひとつだ。「若手芸人が、全国にある外国人街に潜入し、泊めてくれる人を探して交渉。成立すればご自宅にお邪魔してガチコミュニケーションに挑戦する」(公式HPより)というのが番組趣旨である。はやりの「ついていく系」企画でもあり、知らない人と寝食をともにするという意味では、以前にこの連載で紹介した『チョイ住み』のような趣もある。

中略

最近のテレビでは、「ついていく系」と同じくらい、日本の文化や日本人を持ち上げる番組が目につくようになっている。「日本すごい系」と揶揄する言葉もあるくらいだ。現実には日本は単に憧れられる国ではなく、今回『日本の異国にホームステイ! 』のロケVTRが映したように、外国人労働者たちが苦労をしながら生きているという一面を持つ国でもある。こうしたテーマは、ドキュメンタリー番組ならば珍しくないが、バラエティ番組ではなかなか取り上げられない。もしかすると制作者たちの間には、「ドキュメンタリー番組は真面目に観るもの、バラエティ番組は単純に楽しく観られるものにするべき」という不文律が存在しているのかもしれない。それゆえに、バラエティ番組が取り上げる“異国”の人々は、「日本大好き」と言われる気持ちよさを与えてくれる人ばかりになってしまうのではないだろうか。『体感ドキュメント 日本の異国にホームステイ! 』の、芸人とタレントがスタジオでVTRを観るという構成は、バラエティ番組の手法だ。冒頭で触れた通り、「ついていく系」企画というのも、現在のバラエティの時流に乗っている。さらにVTRの合間には、スタジオで全員がフィリピン名物である孵化直前のアヒルの卵「バロット」を試食していた。日本人からすればグロテスクに見えて身構えてしまうバロットを、芸人がおそるおそる食べるのはバラエティ番組で非常によくあるシーンだ。逆に、日本の食べ物が海外の人から身構えられることだってある。それが文化の違いである。今回千鳥が見せていた反応は、お笑いとしても異文化を受け入れるという意味でも、バランスがとれていたと思う。バラエティでも、こうした文化の違いを単なる罰ゲームとして扱わない方向性がもっと出てきてもいいのではないか。『日本の異国にホームステイ』は、こうしたバラエティでおなじみのフォーマットを使いながら、番組のタイトルにある通り「ドキュメント」を放送することで、ドキュメンタリーとバラエティの住み分けを飛び越え、日本に横たわる現実に目を向けてもらうことを目指しているように感じられた。 次回の放送はまだ発表されていないが、今後もさまざまな国から来た人の暮らしやその背景を、バラエティ感覚で観ながら学べる番組として機能していってほしい。

フリーライター 西森 路代

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