自分自身が過度の心配性というわけではない。それでも、周囲からは危機感があまり伝わってこない。テレビからは「ワールドカップ(W杯)出場に王手」「あと1勝でW杯出場」と、楽観的な声が響いている。もちろん立場上、ネガティブな発信はできないのはわかる。しかし、果たして本当にそうなのだろうか。今回のW杯予選における「王手」とは、それをかわされた場合、ライバルに逆王手をかけられるという近年経験したことのない大ピンチに陥る可能性を含んでいるのだ。

確かに日本はロシアW杯のアジア最終予選で、グループBの首位に立っている。8試合を終えた時点での順位は、1位日本(勝ち点17)、2位サウジアラビア(同16)、3位オーストラリア(同16)、4位アラブ首長国連邦(UAE)(同10)、5位イラク(同5)、6位タイ(同2)となっている。自動的に出場権を得られるのは2位まで。3位はW杯への出場を掛けたプレーオフに回ることになる。そして、W杯出場の可能性があるのは上位の3チームに絞られた。

各チーム、残された試合は2。このうち、2試合ともに出場権を争うライバルと戦うのは日本だけ。それを考えると勝ち点1のリードはあるものの、日本は正直かなり危うい位置に立たされている。2連敗で3位に沈むこともあり得るのだ。そうなれば、グループAの3位チームとホームアンドアウェー方式のプレーオフ。そこを勝ち抜けても、同じホームアンドアウェー方式で戦う北中米カリブ地区4位との大陸間プレーオフを制さなければW杯出場は果たせない。

8月31日にホームで開催するオーストラリア戦、9月5日のアウェーでのサウジアラビア戦。そのどちらか1試合に勝てば2位以内が確定する。だが、ハリルホジッチ率いる今回のチームがその目標を簡単にクリアできるだろうか。残念ながらジーコや2度目の起用となった岡田武史、そしてザッケローニといった指揮官たちが率いたチームがアジア予選で見せた安定感には、程遠い感じがする。

後になって気づくのだが、「ケチがつく」という事象によって流れに乗れなかったということが勝負ごとにはよくある。この予想は当たってほしくないのだが、ロシアを目指す今回のチームは、これまでのチームにはない問題を抱えてきた。ケチのつき始めは、本来ならば4年の任期を全うするはずだった前監督のアギーレが途中退任したことだ。

慌てての後任探し。白羽の矢が立ったハリルホジッチ監督で挑んだ最終予選も、初戦となるUAEに敗れケチがついた。その後も1―0の勝利で終わるのが内容的には妥当だったアウェーの2試合、オーストラリア、イラクに追いつかれて引き分け。もし、両試合を1―0で締めくくることができていれば、すでにW杯出場権を得ていたわけだから、この時期まで苦しむことはなかった。

大一番となるオーストラリア戦。日本は過去24戦で8勝9分け7敗とほぼ互角の戦績を残している。しかし、W杯予選に関しては5分け2敗。一度も勝ったことがないのだ。さらに試合に臨む両チームの心理面も違う。不確定要素を抱えることになるアウェーでのサウジアラビア戦の前に決めてしまいたい日本は、勝ちにいかなければならない。対照的にオーストラリアは引き分けで十分だ。

なぜならオーストラリアはホームでの最終戦で、最下位のタイと戦う。コンフェデレーションズカップで2014年W杯覇者のドイツと2―3の接戦を演じるなど、このチームは間違いなく強くなっている。日本に対し引き分けさえすれば、確実にロシアへの切符の1枚を持っていく可能性は高いのだ。

いまさら言っても始まらないだろうが、オーストラリア戦に向けて日本サッカー界は総力を挙げて自国の代表チームをサポートしたのだろうか。26日には当たり前のようにJ1の試合が行われる。対するライバルのサウジアラビアは、日本との最終戦を前に隣国UAEとの試合を2日前倒しにした。サウジアラビアは日本戦に備え中6日の十分な準備期間を確保した。対する日本は中4日。しかも、日本は時差のあるしゃく熱の地に移動しなければいけないのだ。

心配が杞憂(きゆう)に終われば越したことはない。埼玉スタジアムでのオーストラリア戦に勝って、楽な気持ちでサウジアラビア戦を皆で見たいものだ。ただ、関係者は最悪のことも考えておかなければいけない。オーストラリアにひどい負け方をしたら、もちろん監督交代もあるだろう。日本協会は後任候補を当たっているのだろうか。

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