ラジオは連日、過激な内容をがなり立てていた。「犯人はツチ族の奴らだ。奴らは薄汚れた汚らしいゴキブリだ。さあ、ゴキブリを駆除しよう!潰せ!殺せ!ゴキブリどもを皆殺しにしろ!」
 ラジオの声に煽られるように、たちまち人々は血に飢えた殺人鬼に早変わりし、手に手に牛刀や山刀などを握りしめて、
今まで隣人だった人間に襲いかかっていくのである。恐怖が現実になってゆく瞬間とはこういうものなのだろうか。
あらかじめ夜の間に、襲うべきツチ族の住む家々には印がつけられていた。

 普段、温和な表情で学校でいろいろと教えてくれた先生は、教科書の代わりに山刀を持ち、よく切れるように砥石の上でひたすら磨いている。
これまで従順で勤勉だった人間が血も凍る殺人鬼に早変わりし、少女や子供にさえ平気で人殺しが行えるようになるのだ。
 虐殺が始まると、あるツチ族の家族は市長に保護を求めた。市長は彼らに教会に隠れるように指示した。子供連れの女や老人が彼の親切心に感謝して教会に身を寄せた。
ところが、深夜、ナタや手斧を持ったフツ族が皆殺しにしようとやって来た。教会はぐるりと包囲され、全員がメッタ斬りにされて殺された。なんと、山刀を振り回しながら先頭を切って走って来たのは昼間の市長であった。

この集団ヒステリーで大虐殺をしてしまったルワンダ大虐殺と、渡部君への集団ヒステリー・集団ネットリンチがソックリ。
日本は本当におぞましい社会になってしまった。