W杯予選オーストラリア戦。「王手」と言いつつ、実は危ういハリルJ

■ヤバイぞ、アジア最終予選5〜杉山茂樹×浅田真樹(前編)

 ロシアW杯アジア最終予選もいよいよ残り2試合。日本は8月31日にホームでオーストラリアと、9月5日(日本時間6日)にアウェーでサウジアラビアと対戦する。

 8試合終了時点でのグループBの順位は、1位日本(勝ち点17)、2位サウジアラビア(16)、3位オーストラリア(16)、4位UAE(10)、5位イラク(5)、6位タイ(2)。
すでにUAE以下は脱落が決まっており、日本、サウジアラビア、オーストラリアの三つ巴の戦いとなっている。最終的に1、2位はW杯出場権を獲得。3位はプレーオフへと回る。
はたして日本はここでW杯出場を決めることができるか。サッカーライターの杉山茂樹氏と浅田真樹氏に今後の戦いを展望してもらった。

浅田 残る試合は日本がホームのオーストラリアとアウェーのサウジアラビア。それに対してオーストラリアは日本とやった後、ホームでタイ戦。サウジアラビアはアウェーでUAEと戦ってからホームに日本を迎えます。

杉山 UAE対サウジアアラビアは日本対オーストラリアの2日前に前倒しされました。それだと日本のほうが2試合目との間隔が短くなるから、日本もオーストラリア戦を前倒しさせようとしたんだけど、「言い出すのが遅い」と却下された。少しトロいね。

浅田 まして日本はサウジアラビアに移動しなきゃいけないわけですから。サウジアラビアとUAEなんてたいして離れているわけではない。

杉山 ここにきて勝ち点1のリードというのはほとんど意味がなくなった。日本はとにかく1勝しなきゃいけない。2試合とも引き分けたらアウトの可能性が一番高い。
どう見ても実際は横並びでしょう。よく「王手をかけた」と言うけど、王手が覆ったらいきなり大ピンチです。むしろ王手という一番語呂のいい言葉を探し出してきて、みんなでひと安心した気になっている風潮が一番危ないんですよ。
はっきりと「危ない」と言ったほうがいい。油断したムードはやられちゃうパターンのひとつですよね。

浅田 面白いなと思うのは、日本は6月、イラクに引き分けたじゃないですか。テレビ中継では「勝たないと苦しくなりますからね」と言っていたのに、引き分けた途端に「でも王手ですから」と言い出した(笑)。王手という解釈は、別に間違いではないですよ。
でもそれだったらもう少しその前の段階から冷静でいてほしい。アウェーでコンディションも悪いし、ここは最低でも勝ち点1を取れば王手なんだから……というスタンスでイラク戦に臨んで、この結果になるのはアリなんです。
別にイラク戦に勝っていたとしても、オーストラリア戦に引き分けで出場が決まるということはなかったわけだから。もう少し冷静に、余裕を持って臨んだほうが結果としてはよかった。

杉山 それならば計算どおりだからね。そうすると強そうに見えるんだ。でも今の日本にはその余裕がないんです。だから必死によりどころを見つけて安心しようとする悪い癖がまた出た。
「オーストラリアに勝てばいいんだから」と言うけど、そう簡単に勝てる相手ではない。日本がコンフェデレーションズ杯に出てドイツと3対2の試合ができるかという話です。

浅田 そこは若干ゲタを履いている部分があって、逆に4年前のコンフェデでは、日本とイタリアが3対4の試合をやった、みたいなこともあるじゃないですか。

杉山 確かに、ドイツもベストメンバーではなかったからね。でも総合的に見て、オーストラリアがそんなに弱いチームじゃないことは確かだと思う。
少なくとも去年の10月に見た日本戦のオーストラリア(1−1の引き分け)よりはポテンシャルがあるということを再認識した。前線の3人、トミ・ユリッチ、トーマス・ロギッチ、マッシモ・ルオンゴはやっぱり怖いし、ロビー・クルーズというのもいい選手。
背の高い選手もいるし、ウィング系もいる。ホームで日本とやったときは4−4−2の中盤ダイヤモンド型だったけど、コンフェデでは3バックでやっていた。だから今回は布陣も変えてくる可能性があるし、それによって対応策も違うような気がします。

>>2-5あたりに続く)

web Sportiva 2017.08.20
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jfootball/2017/08/20/post_10/