課題:オフザボールでのハードワークと厳しいプレッシング

目標:攻撃の最後の数メートルにおいても守備のタスクを忘れることなく、チームに間を与えるプレーをし、クオリティを発揮すること。そして得点を記録すること

ヘタフェ移籍の柴崎岳、テネリフェで歩んだ軌跡を写真で振り返る【100枚】

文=ホセ・アントニオ/JOSE ANTONIO DE LA ROSA(アス紙ヘタフェ番記者)

■新チームへの適応度は?

リーガ・エスパニョーラのプレシーズンも終わりを迎えようとしている中、柴崎岳は期待以上にヘタフェに適応してきている。

新しいシーズンの開幕を数日後に控えた今の段階で判断を下す必要があるとするなら、サン・マメス・バリアで行われる古豪アスレティック・ビルバオとの開幕戦で先発出場を果たす可能性は非常に高い。スペインではポジションを勝ち取るために激しい競争を勝ち抜かなけれならないが、彼は限られた時間の中で自分の居場所を手にしたのだ。

ヘタフェは昨シーズン、一部への昇格プレーオフを最後まで戦っていたため、新シーズンの開幕に向けた準備期間はリーグ内で最も短いチームとなってしまった。そんな中、柴崎には大きな期待がかけられていたが、日本人テクニシャンは見事にそれに応えてみせた。テネリフェに加入したばかりの頃は適応に苦しんだが、今回はスムーズにチームに馴染むことができている。

チームメイトは彼のシャイな性格をからかってはいたが、内向的な性格と言葉の壁がある中でチームに溶け込もうと努力する姿を評価している。そして何よりピッチ上で示すクオリティの高いプレーが周囲の信頼を勝ち取る結果につながっている。あの同僚は「シバサキがリーガで成功を勝ち取るためにやってきたことは非常に明白だ」と話す。「多くの選手よりも早く物事を考えられる選手だ」と。

■レギュラー争いの現状は…

ヘタフェがプレシーズンに行った複数の試合は成功に終わったとは言えないが、ある程度今後の予測を立てる役には立ちそうだ。柴崎は最初の試合をボランチとしてプレーしたが、2試合目以降、ホセ・ボルダラス監督は彼のポジションを上げ、トップ下で起用するようになった。また、オプションの一つにすぎないとはいえ、昨シーズン、テネリフェでプレーした左サイドでも数分間プレーさせた。

プレシーズンの中でヘタフェが最も重要な試合と位置づけていたアトレティコ・マドリー戦で柴崎がトップ下で先発出場したことは、大きな意味を持つと言えるだろう。監督は「ラストパスの精度を上げなくてはいけない。彼は最後の数メートルで我々が必要とする間を取れるだけのスキルを持っているのだから」と課題を指摘していたが、全体を通して見ればピッチに立っていた80分間を非常に高いレベルでプレーしていた。

また、その前のジローナ戦でも先発出場を果たした上、初ゴールを記録していた。ジローナは、まさにヘタフェがプリメーラ・ディビシオンを戦う上で直接的なライバルとなるチームだ。こうした事実を並べていけば、数日後に迫ったビルバオ戦で彼が先発メンバーとしてピッチに立っている未来を想像するのはさほど難しいことではないだろう。

唯一、気がかりな点があるとすれば、ポジション争いのライバルがチームの中心選手の一人であり、ファンのアイドルでもあるフランシスコ・ポルティージョであることだろう。柴崎は攻撃面のクオリティに加え、守備面では自己犠牲の精神を体現し、ボルダラス監督を大いに驚かせた。だからこそ、ライバルとの争いで一歩リードすることに成功したのだ。しかし、リーガでの経験を比較するとポルティージョの方が一枚上手である。さらに当然のことながらヘタフェにおけるこれまでの実績も考慮されるだけに、全くもって安泰な立場にいるわけではないということは書き記しておきたい。

また、プレシーズンを振り返って柴崎からネガティブな点を見出すとするなら、一つはセットプレーでボールを蹴る機会を失ったことだ。初日にはほとんどすべてのコーナーキックを蹴っていたが、最後の日になると1本も蹴ることはなくなっていた。ボルダラス監督は、ファイサル・ファジル、ダミアン・スアレス、ダニ・パチェコといった面々を好む。ポルティージョと比較してみても、ことセットプレーに関しては優位性があるわけではない。

柴崎が定期的にプレーする機会を確保するためには、こういった評価を覆していくか、他の面でマイナス要素を補えるほどのパフォーマンスを示していく必要があるわけだ。