７月25日から全体練習に参加した矢田は、選手登録完了直後の７月29日の第25節・愛媛戦でいきなりベンチ入りすると63分に交代出場。その試合は０−１で敗れ、ほろ苦い『千葉デビュー』となってしまったが、続く第26節・徳島戦ではスタメン出場し、チームは１−０の勝利。矢田は愛媛戦ではインサイドハーフの右サイドでプレーし、徳島戦ではインサイドハーフの左サイドでスタメンの座をつかんだ。
今季の千葉は『ハイプレス＆ハイライン』というＪリーガーは未経験といっていい特殊なチーム戦術を採用している。どのポジションでもこの戦術では状況判断もプレーの選択も難しい面があるが、インサイドハーフは攻守のリンクマン的な役割もある。
「攻守両方において重要な役割があそこのポジションにはあるので、そのタスクは最低限しっかりこなして、そこに自分の色を出していけたらなと思います」
愛媛戦後の８月３日、自分が務めたポジションについてそう話した矢田は、千葉での初のプレーを踏まえ、今後に向けてこんなふうに話していた。
「（愛媛戦で千葉は退場者が出て）１人少ないということで難しい状況ではあったんですけど、攻撃の部分でもっとアクセントを加えられたらよかったのかなという、自分の中の反省点はあります。やっぱり点を取るためにはどこかでリスクを冒して前に出て行かないといけないので、そこの部分はもっとチャレンジしてもよかったのかなとは思います。個人的には、勝負球というかスルーパスとかそういう部分は、自分の中で出していきたいなと思っています。チームとしてサイド攻撃を重要視していて、サイドチェンジのボールが多くなる中で、そういうパスをたくさん使ったら相手もそこを意識してくると思う。そうなったら逆に真ん中がちょっと空いたりすると思うから、その隙をしっかりずっと狙っておいて、そこでスルーパスを出していけたら効果的なのかなと思います」
その後の徳島戦、そして後半アディショナルタイムの清武功暉のゴールで劇的な勝利を収めた前節の山口戦でも、矢田はインサイドハーフの右サイドの町田也真人とのバランスを意識して、それほど攻撃的な部分での『自分の色』はまだ出せていないように見える。それでも、戦術理解の早さや柔軟な適応力を見せ、前線からのプレスや攻撃の組み立てで貢献。山口戦の試合後は、久しぶりの連続スタメンで味わった連勝に笑みを浮かべながら、「今は充実してサッカーができているみたいですね」という質問にこう答えた。
「名古屋ではなかなか試合に出られなかったので、やっぱり試合に出ないとサッカー選手である以上、成長もなかなかできないし、充実感という部分もないので。こうやって試合に出られて、しかもチームが勝てているのですごく充実感はあるので、あとはこれにもっともっとクオリティを上げて、もっとチームに貢献したいなと思います」
今節は首位の湘南との大一番だ。徳島戦や山口戦以上のハードな試合が予想され、フアン エスナイデル監督はスタメンを選手のコンディションによって選ぶタイプで、試合間隔が短ければ短いほどスタメンを確約されている選手はいない。それでも、今やすっかり千葉の一員となってプレーしている矢田は、次のように意気込みの言葉を口にした。
「相手はどこであれ上位を狙うためには勝たなきゃいけない。湘南はすごくいいチームでやりがいもあると思うし、そういう相手に勝ってこそ自信を持ってやっていけると思う。しかもホームなので絶対に勝ちたいなと思います」
強い相手との対戦こそ矢田の『自分の色』が出せるかが重要になるだろう。矢田は千葉の勝利、そしてＪ1昇格に貢献するプレーをすることで、充実感を得ながら成長していく。
文：赤沼圭子（千葉担当）
明治安田生命Ｊ２リーグ 第28節
8月16日（水）19:00KO フクアリ
ジェフユナイテッド千葉 vs 湘南ベルマーレ
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