フォーリーブス時代は選手として参加し、1980年代は司会を務めた、おりも政夫が振り返る。
「当時、運動会や野球大会など芸能人が出場するスポーツ番組がたくさんあり、その一環として生まれました。五木ひろしさんや八代亜紀さんなどの演歌歌手も水着になっていましたよ」
当初は年齢やジャンルを問わず人気歌手が出場していたが、1971年デビューの南沙織や中3トリオと呼ばれた山口百恵、桜田淳子、森昌子などのアイドル歌手が人気を集めるようになると、水泳大会でも必然的に彼女たちが中心になっていった。『アイドル進化論』の著者である社会学者の太田省一氏が話す。
「水着で動くアイドルの姿は本当に貴重でした。今ではイメージビデオで見られますが、1978年の段階でビデオの普及率は1.3%で、ビデオソフト自体もほぼ発売されていませんでしたから。恥ずかしそうな佇まいに色気を感じたものです」
榊原郁恵や河合奈保子、柏原芳恵はグラマラスな体型で、石川秀美は美脚で注目を集めた。
「プロポーションの良さに初めて気付くこともあれば、意外と運動神経がいいとわかることもありました。歌番組では決して見られないアイドルの一面を知ることができたんです」(太田氏)
https://www.news-postseven.com/archives/20170813_602578.html
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1981年、石野真子は「女子平泳ぎ決勝」で他の5人が水中からスタートする中、1人だけ思い切りよく飛び込む。しかも平泳ぎではなく、顔を出したままの横泳ぎで、1位でゴールイン。優勝後のインタビューでは「ああ苦しかった。今まで飛び込んだことないんです」と告白。苦手な水泳にも一生懸命取り組む姿にファンは感動した。
一方、松本伊代は驚愕の行動に出た。おりもが振り返る。
「ピストルが鳴ったと同時に水中で歩き始めたんですよ。思わず、“なぜ歩いているんだ! それでも競泳か!”と実況してしまいました。何秒も経過しているのに、まだ3メートルくらいしか進んでいなかった(笑い)」
アイドルの個性や色気がぶつかり合うと同時に、芸能ニュースも提供していた。1983年夏には「お見合い障害物レース」という競技で、郷ひろみが松田聖子を抱きかかえながら水上を走るシーンもあった。
「スタッフが、意図的に噂のふたりをペアにしていたようです。話題を提供することで雑誌にも大きく取り上げられるし、視聴者も喜んでくれました」(おりも)
放送当日発売の女性週刊誌2誌は、巻頭グラビアで“いま、噂のふたり”“抱っこしてもらえたネ”という見出しを打ち、応援席でも郷の横に座って腕を絡める聖子の姿などを掲載した。
●おりも・まさお/1953年7月4生まれ。東京都出身。8月16日まで大阪・新歌舞伎座で上演中の舞台『コロッケ特別公演』に出演中。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号