0001YG防衛軍 ★@無断転載は禁止
2017/08/12(土) 15:28:12.66ID:CAP_USER9多くの人に読んでもらいたい作品である。
■父の言葉が未来の道を後押しする
玄関のドアを開けると母の泣き声が耳に響いてきた。
「どうしたん!?」
と叫んで、駒野友一は母の泣いている声がする寝室の前に立つ。
「お父さんが......」
息子に告げなければならない言葉が出てこない。
母は、正座したまま上半身を前に倒して、布団の上であおむけになったままの父の胸の上に顔を埋めた。
それは、まだ暑さが残る9月のことだった。その日の朝もいつもと同じ時間に起きて、学校に登校するために玄関のドアを開けようとしていた。背後が気になって振り返る。いつもは、その時間に起きている父の姿がどこにも見当たらなかった。
「今日は寝ているんだ。珍しいな」と不思議に思う。
駒野は、中学3年生の12月まで、地元和歌山県の海南市立第三中学校に通っていた。学校での部活動は、サッカー部と駅伝部に所属していた。サッカーでは、その頃からすでに関西選抜に選ばれるなど、名の知れた選手だった。一方、駅伝部では、中学生のレベルを超えた身体能力の高さで中心選手となっていた。駅伝部の練習は、学校の授業が始まる前の早朝6時半から行われる。自宅から学校まで徒歩で15分の距離。早朝練習のために、毎朝6時には家を出なければならない。その日も、駅伝部の練習に行くために、玄関を出てグラウンドに向かっていた。
練習を終えて1時限目の授業が始まると、グラウンドの通り沿いの道から救急車のサイレンが聞こえてきた。駒野は、教室の窓から外をのぞいた。救急車が自宅の方向に進んでいく。
「家の近くで何かあったのかな......」と救急車を目で追いかける。
しばらくすると、校長先生が大声を上げて教室に入って来た。
「友一、お父さんが倒れた。早く家に帰れ」
いつもなら学校へ行く時に起きている父が、今朝は姿を見せなかったことを、ふと思い出す。
「もしかして」と悪い予感が頭をよぎった。
彼は、慌てて家に走って戻っていく。家の奥から母の泣き声が聞こえてくる。
「僕が家に着く前に、父は息を引き取っていました」と言って駒野は、静かに言葉を絞り出す。
病名は、急性心筋梗塞だった。
駒野は、幼稚園の頃からサッカーボールを蹴って遊んでいた。本格的にグラウンドの上でサッカーを始めたのは、小学2年生になってからだった。両親は、彼のプレーする姿を見るために、何度もグラウンドに足を運んだ。
父は野球が好きだったので、サッカーに打ち込む息子を見て、「野球やらないかな」と口にしたことがあった。「野球選手になってほしい」という父の期待は、サッカーに打ち込む息子の姿を見るたびに薄れていった。父に「この子はサッカー選手に向いている」と思わせた試合がある。それは、駒野が、小学4年生の時、練習試合で見せたゴールシーンだった。
当時の彼は、FWのポジションを任されていた。サイドの選手が、駒野にパスを出す。バイタルエリアの真ん中のポジションにいた彼は、ボールを受けて少しドリブルをする。前進してきたGKのポジションを知ると、駒野は迷わずロングシュートを放つ。ボールはGKの頭上を越えてゴールネットに吸い込まれる。その場面を見た父は、「すごいわ!うちの息子は」と叫んだ。遠い距離から放ったシュートがゴールに吸い込まれる瞬間を見て、「友一はサッカーに向いている」と確信する。
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