◇マラソン、終盤の午前9時半には体感37度にも

 2020年東京五輪の開催期間(7月24日〜8月9日)の暑さの危険を示す研究結果が相次いで発表されている。東京は都心のヒートアイランド現象による気温上昇に加えて湿度も高く、過去最も厳しい「酷暑五輪」とも予想される。大会組織委員会は今年から本格的な対策に乗り出し、国や東京都でも準備が進む。「暑さ対策」は高騰する大会経費や輸送と並んで五輪準備の重要課題となっている。

 「海外の選手が五輪期間中の日本の暑さを知ったら、出場を取りやめる人が相次ぐのでは」。専門家の間でこうした懸念の声が聞かれるほど、東京五輪は過酷な暑さになりそうだ。東京と過去約30年の夏季五輪開催都市を比較した横張真・東京大教授(都市工学)は「夏の東京は、高温で湿度も高い。過去の開催都市と比べて気象条件は最悪で、人体へのダメージがかなり大きい」と警告する。

 特に心配されるのがマラソンだ。首都大学東京と佐賀大の研究チームは東京五輪のマラソンコースで、日陰がほとんどない場所や多くの観客が予想される場所など特徴的な6地点を抽出し、地上からの高さが1.2メートルの平均放射温度(MRT)を計算した。MRTは、日差しの強さや路面・建物などの照り返しによる熱を考慮した温度のことで、気温よりも選手や観客が実際に体感する温度に近い。

 晴天の場合、マラソンのスタート予定時刻の午前7時半でも6地点の平均が約33度と高く、レース終盤の午前9時半には約37度に達した。一方、午前5時半だと約27度となった。国や都はマラソンの暑さ対策として、舗装の改修などを提案しているが、研究結果からは、スタート時刻を早める方がはるかに効果が高いことが分かったという。

 首都大学東京の熊倉永子助教(都市環境工学)は「スタート時刻は早ければ早いほどいい。日陰のない場所では日射を遮るなどの対策が必要だ」と話す。

 マラソン以外の競技でも熱中症への注意が必要だ。桐蔭横浜大の星秋夫教授(健康科学)らの研究チームは、過去10年間の五輪期間中の東京都心部について、気温や湿度、日射などの気象データを使い、熱中症の発症リスクを表す「暑さ指数」を算出した。暑さ指数は年0.4度の割合で上昇しており、このままだと20年には34度を超えると予測した。環境省は31度以上を「危険」レベルとし、運動を原則中止するよう求めているが、それを超える。

 また、星教授らが過去50年間の気象データから五輪期間中の日照時間を予測したところ、17日間の大会期間のうち13日は晴れるとの結果となった。日差しがあれば熱中症の危険性はさらに高まる。

 選手だけでなく、高齢者や子どもも大勢観戦に訪れることが予想されるほか、炎天下で活動するボランティアも多いと見られる。屋内競技でも、急に暑い屋外に出ると温度差で体調不良になる場合がある。星教授は「東京五輪期間中、熱中症の患者がどのくらい出るか予想もできない」と指摘する。【斎藤有香】

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8/12(土) 9:00配信
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