浦和レッズは、8月9日のヴァンフォーレ甲府戦で1―0の勝利を収め、堀孝史コーチを監督に昇格させての新体制2戦目にして初勝利を挙げた。5日の大宮アルディージャ戦から指揮を執っている堀監督だが、そのチームにはミハイロ・ペトロヴィッチ前監督のころから緩やかながらも変化が見られる。

 システム自体は3―4―2―1で変化がなく、攻撃時に阿部勇樹が最終ラインに下がり4バック化する可変システムもそのままだ。堀監督はチームの大枠には変化を与えていないが、相手ボール時の応対には明らかな修正を掛けてきている。

 ペトロヴィッチ前監督の指揮下では、相手陣内で全てを完結するようなプレー、つまりボールを失った瞬間からの激しいプレスが推奨された。後方に残す人数も「最終的に1対1、同数でも守ればいい」という方針であったと選手たちが話すように、次々と前線に選手たちを送り込んでいった。その結果、プレスの連動性に少しでも穴が生まれると、数人が置き去りになり、最終ラインが無防備にさらされた状態でカウンターを受ける場面が少なからず見られた。

 しかし、堀監督になってからはチーム全体のコンパクトさを何よりも強調している。最終ラインの高さに応じて、前からいける時はいくが、ダメならしっかりとラインを保って守備をする。トレーニングでもその距離感とカバーリングの意識、コミュニケーションと適切なスライドを指摘しながら進め、守備の整備を急いでいる。

 5日の大宮戦、9日の甲府戦と2試合で、浦和の試合を見ていれば何度もリプレイ映像で見た絵に描いたようなカウンターを受ける場面はほとんどなかった。特に甲府戦では、ゴール前の際どい場面を作られたのは1回のみ。クロスの対応も、西川周作が「スペースのカバーよりしっかり人につく方針」と話したように整理された。その中で大宮戦はやや不運な失点もあったが、相手をフリーにするような場面はなく、改善が見られている。

また、ペトロヴィッチ前監督の指揮下では年に数回だったセットプレーのトレーニングも、堀監督のもとでは非公開練習の中で準備している模様だ。守備時にマークを持たないストーンを2枚置くのは変わらないが、クラブ幹部が「1週間で試合に行って、いきなり凄いボールが来るような状態だったのかもしれない」と話したように、慣れと訓練という部分は重要な要素だ。実際、その数回のセットプレーのトレーニングを主導していたのも前監督ではなく、当時、コーチを務めていた堀監督だっただけに、今後も引き出しを増やしていくことも可能だろう。浦和に欠けていた部分は、こうやって少しずつ埋まりつつはある。

 そのうえで、大宮戦、甲府戦とともに、リードをした状態で迎えた試合終盤の戦い方には、改善の余地があるはずだ。何しろ、浦和はリーグ戦38失点のうち、後半16分以降に20失点をしている。結局、大宮戦に同点ゴールを喫したのも後半43分であり、甲府戦も残り15分ほどはかなり相手にボールとゲームを支配された。

 堀監督も大宮戦後に「最後にパワーをもたれたところで、そこを守り切れなかった。そこは自分のアイデアを出して、それをはね返すやり方があったと思います」と話しているように、今後のゲームに選手交代やシフトチェンジなどによってより安定感のあるゲーム運びをする必要性を感じているようだ。より敵陣でボールをキープして時間を使うことや、ボールの運び方で相手を一度自陣に下げさせるようなことも必要になってくるだろう。

 もちろん、ペトロヴィッチ前監督の作り上げてきたチームの土台がしっかりしているからこそ、大掛かりな変更をせずに修正を掛けられているのは事実だ。そうした中で、内容で完全に上回って勝利するというロマン派の指揮官から、もう少し現実的な方向へと舵は切られている。ペトロヴィッチ時代のワクワク感は薄れるかもしれないが、より結果にフォーカスした方向に向かう浦和は、急ピッチで立て直しを図っている。(文・轡田哲朗)

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