【プロ野球通信】

 昨オフにDeNAから巨人にフリーエージェント(FA)移籍した山口俊投手(30)が、野球とは関係のないところで世間をにぎわしている。

 30歳の誕生日だった今月11日、東京都内の飲食店で友人と酒を飲んだ際に、ガラスで右手甲を負傷。酔った状態で都内の病院を訪れ、男性警備員を負傷させたり、扉を壊したりした疑いだ。しかも、球団がそのトラブルを把握したのは1週間後の18日。事案もさることながら、そのことを球団に隠していた悪質さだ。

 これでは、ファンから愛想尽かされても仕方ない。右肩痛の影響でファーム暮らしが続き、ようやく復帰したと思ったら、酔って暴れて、警察沙汰。どれほど期待を裏切れば気が済むのか。

 昨年11月8日、山口俊は当時所属していたDeNAの球団事務所で大粒の涙を流していた。この日、球団にFA権を行使する申請書類を提出。その後報道陣に囲まれ、「チームに対する愛着もある。FAする意味合いも分かっている」などと語り、目を赤くした。

 高田繁ゼネラルマネジャー(GM)は「来季優勝するには必要な戦力だ」と慰留したものの、結局この約3週間後に巨人移籍を決断。契約は推定3年7億円。DeNA時代の推定年俸8000万円から大幅アップだ。先発の柱になってほしいという、巨人の期待の表れだった。

 しかし、その期待はどんどんしぼんでいく。昨秋に患った右肩痛が完治せず、春季キャンプは3軍スタート。キャンプ中にはインフルエンザにもかかった。当然ながら開幕に間に合わず、2軍で実戦復帰したのは5月中旬になってから。1軍が球団ワーストの13連敗を喫し、チーム一丸となって必死にもがいていたときも、その輪の中に姿はなかった。

 6月13日、チームの成績不振を受けて、堤辰佳氏がGMを辞任した。堤氏は退任時、「(成績不振は)昨シーズンオフ以降に獲得した選手らの出遅れなどが大きな要因」とコメント。自ら獲得に尽力した山口俊らが戦力になっていないことに、強く責任を感じていた。

 くしくも堤氏の退任の翌日に山口俊はプロ初登板。ここで6回を無安打無失点という完璧な投球を披露する。この日のお立ち台では、またも男泣き。「FAで来て迷惑をかけていた。この1勝で終わらず、これからジャイアンツの一員として頑張っていきたい」。もう応援してくれる人を裏切らない。そんな涙にも見えたが…。

 中日戦のためにチームが名古屋に滞在していた18日に、球団は泥酔トラブルを把握した。山口俊からの申告なのか、外部から情報があったのかは明らかにしていない。チームに帯同していた山口俊はこの日に帰京。球団の指示で練習などは行わず、謹慎状態となっている。

 昨年12月。山口俊は巨人移籍を決断した翌日に散髪に行った。そこで黒髪、短髪の“巨人仕様”に変身した。「一日も早くチームカラーにふさわしい格好に」。巨人の一員になる覚悟を示したのだが、最も大切な内面は「紳士」になれていなかったようだ。

 巨人選手の不祥事は、2015年秋以降に発覚した野球賭博問題が記憶に新しい。この時は賭博に関わった3投手がNPBコミッショナーから無期失格処分を受け、巨人から解雇処分となった。関与の程度が低かった高木京のみ1年間の失格処分となり、現在は育成選手としてチームに復帰している。

 山口俊は今後被害者との示談が成立すれば、一定の謹慎期間を経て、チームに復帰するとみられる。トラブルが明らかになってから依然として姿を見せない背番号「42」。表に出てきたときにどう釈明するのか。長嶋茂雄終身名誉監督が「ああいうことをしてはいけない。まずいこと」と話したという今回のトラブル。仮に復帰した際にGファンも長嶋氏も心から迎えてくれるだろうか。

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