チリッチ、突然の涙の訳は「こんなに不運に見舞われるなんて」

 フェデラーの応援一色だったセンターコートのムードが変わった。コート上の異変に気づいたからだ。

 第2セットの第3ゲームを終えたチリッチは、ベンチに戻ってタオルに顔をうずめた。大きな肩が震えていた。一世一代の舞台でチリッチは泣いていた。

 準決勝から左足底のまめに痛みがあった。水ぶくれが破れ、左右に方向転換しようと踏ん張るたびに強い痛みが出た。
準決勝を終えてから懸命に治療はしてきたが前日になって悪化。決勝前のウォームアップから万全ではなく、「難しい試合になる」と予期していたという。

 ただし涙の理由は痛みそのものではなかった。「この数カ月間全てを注いで準備を重ねてきた。
自分のチームスタッフもそうだ。それなのにこんなに不運に見舞われるなんて」。
自分を支えてくれたスタッフに対する申し訳ない思い、そしてもちろん悔しさがあった。
「痛みに邪魔されて、戦術や自分のするべきことに集中しきれなかった。これほどの大舞台なのに、自分のベストのプレーができない。
その気持ちを消化しきれなかった」

 ゲーム再開時、観客はスタンディングオベーションでチリッチの背中を押した。患部に負担がかからないようにとサーブ&ボレーにも打って出たが、
不慣れなプレーはフェデラーの餌食になった。

 14年全米オープンに続く2つ目の4大大会タイトル奪取はならなかった。「今日の負けは悲しくてショックは大きい。
でもここまで来たことを誇りに思うし、チームにも感謝したい」。フェデラーの驚異の強さとともに、チリッチの涙も記憶に残る決勝戦だった。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170717-00000001-spnannex-spo