見落としが4割も

しかし、その結果はいくら待っても告げられない。1ヵ月ほど経った同年2月2日、再び大量の血尿が出たため、竹原さんはB医師に再診を頼んだ。翌日、診察室を訪れると、がんであることを告げられた。

「B医師は、1ヵ月前の検査結果を眺めながら『よく調べたら、がんの数値が出ていた』と言ったんです。

当時は何も考えられませんでしたが、いま考えると、ふざけるなと思います。結果は、少なくとも1月の中旬には出ていたのに、B医師はそれに目を通していなかったんです。

その病院では、毎日大量の患者を診るから、いちいち結果を確認していなかったのだと思う。僕が痛みを我慢していたり、血尿が出ていなかったら、がんの発見はもっと遅れていたはずです。それを考えるとおそろしい」

検査手術を受けた竹原さんは、B医師に膀胱の全摘出を勧められる。竹原さんがA医師に、全摘出になったらどうなるのか、と問うと、彼は謝ることもなく、「チャンピオンは十分遊んだから(性的不能になっても)大丈夫だよ」とズレた返答をしただけだった。

「振り返っても、あまりの無責任さに腸が煮えくり返ります。そもそも彼がろくな診察をしなかったからこうなったのです。その後、セカンドオピニオンを受けに北関東の病院に行き、『もっと早く検査をしていたら全摘出の必要はなかった』と言われて、落ち込みました」

最終的に竹原さんは、東大病院にかかり、膀胱の全摘出手術を行って無事成功。その後、再発もしていない。しかし、たくさんの後悔がある。

「A先生が1年間くらい放置していた時に、もっと自分で調べて病院を変えていればよかった、と強く思います。周囲からは、明らかにおかしいと言われていたのですが。

がんの経験を通してわかりましたが、人間は追い込まれた時、『大丈夫』と言われると、その可能性を信じてしまいます。医師には最悪のケースを想定してほしい」