あの医者じゃなかったら

がんは、数ヵ月発見の時期が遅れただけで患者の運命が大きく左右される病気だ。だからこそ患者は、医師はがんを真剣に見つけてくれるだろう、見逃すことなどないだろうと信じてしまう。

しかし、そうした患者の不安をよそに、流れ作業のように診察を行って検査結果を見落としてしまう医師や、十分な検査さえしない医師もいる。

関西に暮らす30代の女性も、乳がんを見落とされた患者のひとりだ。女性が述懐する。

「妊娠していた数年前の春、右乳房にしこりができ、病院に行ったのですが、先生からは『乳腺炎か乳がんかわからない。とりあえず大丈夫でしょう』と家に帰されました。

6月、母乳に血が混じるようになり、再び同じ先生に相談しましたが、やはり『様子を見ましょう』と言われた。

その後も大丈夫と言われ続けたのですが、さすがに心配になって、紹介状を書いてもらった。

紹介先の病院で検査をしたところ、がんだと告知された。『人生は終わりだ』と告げられたようなショックでした。

その後、右乳房の全摘出手術を行い、現在はホルモン療法で経過を観察しています。最初の医師が別の人だったらという後悔はぬぐえません」
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かつてWBAミドル級王者だった元プロボクサーの竹原慎二さんもまた、医師の言うことを素直に受け止めたがゆえに、膀胱がんを進行させてしまった。竹原さんが語る。

「'13年1月、頻尿がひどいので、知り合いのA先生の検査を受けました。当初は膀胱炎と診断され、抗生物質をもらいましたが、改善しない。再び診察を受けたけれど、『チャンピオンはお酒を飲むからだよ』と薬を渡されるだけでした」

ところが、およそ1年後の同年の大晦日、異変が起きる。便器を真っ赤に染める血尿が出たのだ。

竹原さんはA医師に総合病院の泌尿器科医・B医師を紹介してもらい、'14年1月6日、血液検査、尿細胞診などを受けた。