いまやラブホテルでも居酒屋でもウォシュレットが当たり前の時代に
なってきて、皇居周りをランニングする女性のための専用更衣施設が、
化粧や髪の手入れをできる形で実現している、なんていう話を聞くと
ああやっとこの国と国民も、バブル時代に得るべきだったものを
現実に手に入れられる段階に来たんだなあと思う。


そのバブルと言われていた1988年、近鉄の猛追で大観衆が詰めかけた
10・19、伝説の川崎球場決戦。

阿波野ファンの女性なども大挙押し寄せた球場だったが、なんとここの
外野側観客席エリアには女性用トイレがなかった。
女性たちは男性客がたむろする共同トイレの個室に、男たちの視線を
浴びながら入るしかなかった。

球場には弁当も飲料水も大して仕入れられておらず、ダブルヘッダー
第二試合の頃には食べるものは何もなかった。ラーメン売り場に
「汁だけでも分けてくれ!」と懇願する人まで出た。


これが日本がバブル経済に湧きはじめた時代の話である。
思えば東京ドームこけら落とし二日目、タイソンの試合を見にドームに
入ると、前日の巨神オープン戦のたった1日の使用で、階段やシート下は
早くも食べ物のゴミなどでベトベトになっていたものだった。

野球ファンの奥田英朗は当時のことについて「野球にファンサービスなんて、
異次元の話でしたな」とその戦後闇市レベルの感覚を回想している。

川渕がJリーグを作っていなかったら、今のスポーツ興行や施設は
どうなっていたか、想像するだに恐ろしい。