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■時代は「チケ流」から「チケキャン」へ

 そんな中、2008年あたりから流行り出したサイトが『チケット流通センター(通称:チケ流)』。このウェブサービスでは、掲載された価格ですぐに購入できる“即決スタイル”をとる。面倒な入札終了の待ち時間もなく非常に便利なのだ。

 また、『ヤフオク!』と違ってID表示がないので、誰が出品し、誰が購入したかが第三者にはわからないため余計な感情に気を取られない。

 しかし、質問欄がないため座席番号を絞ってもらうことなどはできない。あまり細かく座席番号を書いて出品すると、『ジャニーズファミリークラブ(編注:通称ファミクラ、ジャニーズタレントの公式ファンクラブの母体となる組織のこと)』にチェックされてしまうおそれがあるのだ。

 こだわりの強いジャニヲタは好きなタレント(担当)の立ち位置も気にする。「上手サイドなら欲しい……」などの思いはあれども、買ってみないとわからない“くじ引き”のような感じであった。

 その問題までも解消したのが現在CMでも見かける『チケットキャンプ(通称:チケキャン)』である。こちらも“即決スタイル”であり、質問欄もある。また『チケ流』よりも出品が簡単で、出品文言のテンプレートまで用意されているのだ。

 さらに売った金額の振り込みも手続きすれば即日入金も可能であり、今のところ、最強のサイトといえる。2017年現在、『チケキャン』が主流になりつつある。

ジャニヲタが転売チケットを買いたくなるのにはワケがある

■なぜジャニヲタは高額なチケットを購入するのか

 さて、前置きが長くなったが、そもそもなぜジャニヲタは高額なチケットを購入するのか。

 一般的にコンサートといえば、観に行くものである。しかしジャニヲタは違う。会いに行くものなのだ。

 主にJr.担などに多くみられるのだが、ファンが少ないジャニタレだとコンサートに毎回同じうちわを持ち、良い席ばかりに入っていると覚えてもらえる。

 カンペに「投げちゅうして」などと書いて何度も同じものを見せたり、「○○(自分の名前)のこと覚えてね」など、繰り返していくうちにタレントと言えども人間なので覚えていくのだ。そうすると「私の名前は?」というカンペだけで名前を呼んでもらえたりする。

 そこで、嫉妬が生まれる。「ずるい、私の名前も覚えてほしい」「もっといい席に入ればいいの?」と……。

 また、前述した「チケット掲示板」とは別に、ジャニヲタについて話す専用の掲示板も存在する。ここには、担当ごとのスレッドがあり「誰がどこの席に入っていた」「誰がどんなファンサービス(通称ファンサ)」を受けていたかなどが事細かに報告されてしまう。

 そこで、有名なジャニヲタというものが出てくるのである。常にコンサートで最前列に入っておりファンサをもらっていて、ほかの担当から認知されているような。

 そういうジャニヲタに対して、憧れるもの、嫉妬するもの……。どちらにせよ、掲示板は“回る”。つまり、書き込みが増え続けるのだ。

 自己顕示欲の強いヲタクのなかには、ネット上で自分の名前が露出することを好む人もいる。自ら、自分の名前をあたかも他人が書きこんだように掲載するジャニヲタだっている。

 まるで、今はやりのタレントとお付き合いしていると思わせぶる“匂わせ女子”と同じである。SNSで付き合ってるタレントとわかるような写真を掲載する。女子のマインドはたとえ有名人でも無名な一般人でも変わらない。相手がタレントであるならより一層だろう。

「私は特別なのよ」「私はすごい!!」

 そう、言いたいのだ、みんなにわかってほしいのだ。それは、タレントが好きだからではない。結局そんな自分が好きなのである。

<著者プロフィール>
菱ユーキ(ひし・ゆうき)◎ライター。ヲタク経験値レベル100。ジャニヲタ歴30年。アラサーヲタクの代弁使。かつてはメルマガで約1万人以上もの購読者を誇る。

<今回のジャニヲタ用語集>

【担当(たんとう)】ジャニーズでお気に入りのメンバーやグループのこと。「ニノ担」などと表現する。

【ファミクラ】ジャニーズファミリークラブの略称、ジャニーズタレントの公式ファンクラブの母体となる組織のこと。