日本代表は6月3日、千葉県内でトレーニングを実施。その練習中、興味深い一幕を目撃した。
 
「少し右足に痛みがあるので、大事をとった」と明かした酒井宏樹はこの日、別メニューで調整。軽いランニングで汗を流していると、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に呼び止められる。ふたりはピッチにおける右サイドの位置で話を始めた。
 
 会話が終わると、ハリルホジッチ監督は日本代表の練習着と同じ色である赤いビブスを着て、右ウイングのポジションへ。酒井宏を右サイドバックの位置に立たせて、ボールを要求した。
 
 パスを受けたハリルホジッチ監督は左足で中へタッチ。同時に酒井宏に外を回るように指南する。同じことをもう一度繰り返し、今度は右足で外へコントロール。すると、中を走るように指示をして、そのまま身振り手振りをしながら、ゴールへ向かうようにコーチングをした。
 
 酒井宏はこれまで、日本代表の右サイドで主に本田圭佑とコンビを組んでいた。レフティーの本田が左足でボールを持って中央へ切り込み、その背後を酒井宏がオーバーラップをするシーンが多かった。
 
 しかし、その右ウイングではここ最近、成長著しい久保裕也が台頭。そう考えればこの日の一連の指導は、中へ切り込む傾向が強い左利きの本田ではなく、縦にも仕掛けられる右利きの久保を意識してのマンツーマントレーニングに見えなくはなかった。
 
 全体練習後、酒井宏が個別指導の内容を説明した。

「やれというわけではないが、こういうオプションもあるということで(個別指導があった)。フランスのサイドバックを見ても、中に切り込んでいける選手が多く、モナコ(今季はリーグ・アン制覇)の選手はあれで点になったりしている。前の選手の動きがあっての行動ではあるので、順序は変えずにスペースが空いたからいくというプレーにしたい」
 
 この件について、右サイドで相棒になる可能性の高い久保は次のように語っている。

「そういうプレーもあり。ピッチの中で話し合ってできればいい。タイ戦は上手くいったと思う。でも、右サイドの経験が浅いぶん、もっとボールを受けて、もっと良い状況でチャンスを作れる感じはする。周りの選手とどうやって点を取るか合わせ、積極的に仕掛けてゴールを目指したい」
 
 ここ数試合の鮮烈な活躍で、本田が君臨していた右サイドの牙城を崩した久保。そのパフォーマンスはUAE戦で挙げた先制点(アシストは酒井宏)が示すように、酒井宏との連携が鍵になっている。それでもさらなる進化を目論み、ハリルホジッチ監督が新たなエッセンスを加えた右サイドが、どんなプレーを披露してくれるのか楽しみだ。
 
取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

6/4(日) 11:00配信 
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