最近の五輪誘致は膨大な経費負担が忌避され、立候補を断念する国が後を絶たない。招致時点で国際オリンピック委員会(IOC)の好印象を得ようと、予算を少なく見積もる傾向が問題視されている。2018年2月開催の平昌五輪も11年の誘致当初は8兆ウォン(約8000億円)の総経費を掲げていたが、今や1.6倍の13兆ウォン(約1兆3000億円)に膨張。運営予算も当初から6000億ウォン増の2兆8000億ウォン(約2800億円)に上るが、不足する3000億ウォンの調達が昨年から至上命題になっている。(5月24日の記事を再掲載しています)

 ところが、開幕まで9カ月に迫ろうというのに、韓国メディアには依然としてこの問題が未解決として報じられ、朴槿恵前大統領が関与した国政介入事件によって五輪人気は冷え込んだままだ。4月に終了した五輪チケット販売の第1弾は低調に終わり、韓国メディアには五輪準備がこのまま進めば「韓国はすべてを失うしかない」と悲鳴にも似た報道も現れた。

 ソウル新聞など韓国メディアによると、2月9日〜4月23日に行われた平昌五輪の1次オンラインチケット販売の申請は38万4000枚だった。今回の目標販売枚数は60万枚で、決して順調とは言い切れない数だ。しかも、人気種目と不人気種目との競争率の格差がすごい。

http://www.sankei.com/premium/news/170603/prm1706030014-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/170603/prm1706030014-n2.html
http://www.sankei.com/premium/news/170603/prm1706030014-n3.html



 人気が高かったのは「五輪の華」と称されるフィギュアスケート女子のシングル決勝で、60万ウォン(約6万円)と高額ながら競争率は62対1に達した。韓国のお家芸であるショートトラックも女子1500メートルと男子1000メートル決勝で、15万ウォン(約1万5000円)で33対1。22万ウォンの開会式D席は36.3対1だった。

 これに対して、テスト大会でも不人気だったクロスカントリーなどの雪上種目などは「目標量に満たなかった」(ソウル新聞)。そのため、9月5日に開始される第2弾では組織委員会が組織的な広報活動を実施する方針を示している。

 組織委は118万枚のチケットのうち90%に当たる107万枚を販売し、1746億ウォンの収入を見込んでいる。70%を韓国内で売り上げる計画だ。だが、平昌五輪を統括する文化体育観光部(省に相当)が4月に発表した同五輪への国民の関心は35.6%に留まり、実際に競技場で観戦しようという韓国民は9.2%でしかない。

 国政介入事件に絡み、崔順実被告一族が巨額な五輪利権を得ようした疑惑によって韓国民の五輪への関心が盛り上がらないとの指摘は今も続いている。今回の1次チケット販売は五輪機運の盛り上がり欠如を反映した結果といえる。

 毎日経済新聞は、輸出を依存する中国とは米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐって経済的な報復を受けているほか、北朝鮮の核の脅威、日本との歴史認識などといった国際的、社会的危機が平昌五輪をさらに困難にしていると論評した。そして、国が主催するイベントに公共企業が一つも参加していないのは過去の五輪の開催国の状況に比べて「理解しにくいことだ」と問題視する。組織委の李煕範(イ・ヒボム)委員長は4月、政府に公共機関から2000億ウォンの後援を要請したが、いまだに成果を得られていないようだ。

 平昌五輪の誘致当初は、開催地・平昌が観光地として再生することが期待され、韓国の経済研究機関は約65兆ウォン(約6兆5000億円)の経済的効果を試算した。しかし、現状のままでは夢物語に終わると韓国メディアは危惧する。14年に韓国・仁川で開催されたアジア大会の後遺症があるからだ。誘致によって18兆ウォンの経済効果と27万人の雇用誘発を期待されたが、国の財政支援が薄いうえ国民の関心も低く、実際は1兆ウォン超の赤字が残った。

 ニューシスは、平昌五輪準備が現状のままでは「韓国はすべてを失うしかない」と懸念。歪曲した視線を捨て、五輪ブームの盛り上げと成功のためのサポートの必要性を強調。「困難な状況を克服する力は最終的に国民から出てくるしかない」と訴えた。

 モントリオール五輪は15億ドルの債務を返済に30年かかり、昨年のリオデジャネイル五輪は結局60億ドルの赤字を見た。韓国も同じ轍を踏むのか…。