卓球の世界選手権(ドイツ・デュッセルドルフ)は31日、男女計4種目を行い女子シングルスでは平野美宇(17)が1、2回戦ともストレート勝ち。3回戦に駒を進めた。

 石川佳純(24)と組む女子ダブルス2回戦はドイツのペアをストレートで下して3回戦に進出した。

 平野は4月のアジア選手権で当時世界ランキング1位の丁寧をはじめ、中国のトップ選手を次々に破り、金メダルに輝いた。この世界卓球でも快進撃が期待されるが、15年10月から平野を指導する中澤鋭コーチ(38)は中国と日本選手との実力差はまだ、思った以上に大きいという。

「中国は平野を徹底的に分析して調べてきているので、(攻略される)危機感はあります。こちらもそれに対応していかなければならない。でも、正直、中国人選手との差はまだ結構ある。金メダルを取るまでの実力はないですね。(中国と日本の)一番大きな差は試合中の戦術を組み立てる早さ。中国選手は(想定していた)コースや動きと違った場合、0コンマ何秒の中で考えてポイントを狙うまでの適応力の早さがとても優れている。平野の課題はそういう戦術の熟練性。相手の動きを読みながらコースを外したり、相手が予測できない場所に打ったり、それが(まぐれじゃなく)常に実力として出せるようにしたい。瞬時に判断できる力を身に付けるためにも、また中国で合宿をやって常に中国人と対戦していきたいですね」

■平野の好きなアイドルを勉強中

 指導者の仕事は技術を教えるだけではない。中澤コーチは平野と常にコミュニケーションを取り、メンタル面のケアも欠かさない。しかし、そこには「言葉の壁」が立ちはだかる。

「2002年に日本へ来て、もう十何年間もいるのに、(周りから)『こんな日本語じゃダメ』と言われますね。卓球なら言葉でうまく表現できないときは自分で見本をやって再現すれば何とかなるけど、むしろ普段の生活の会話で不便を感じます。コミュニケーションを取っていくためには、『彼女の世界』を知らないといけない。何が好きなのか、何に興味があるのか。それを知ってから話した方が今後の練習でも受け入れてもらいやすいかなと思っている。でも、平野はアイドルが好きで、『Hey!Say!JUMP』とか『乃木坂46』とか、僕はまったく分からない。勉強したいけど、テレビを見る時間があまりないんですよね……。平野は練習ではうまくいかなくて落ち込んでいたのに、練習が終わったら仲間と話しながら(練習場の)横でそのアイドルのダンスをノリノリで踊っている。切り替えが早いですよ」

 英語はもっと苦手だという中澤コーチ。日本の選手は世界ランキングを重視し、ポイントの高い国際試合に多く出場する。海外中心の生活を快適にするため、平野には「英語を勉強して」と言っているが、返事は「はいはい」。「やる気があるかどうかは分かりません」と苦笑いしていた。

▽なかざわ・るい 1978年、中国出身。24歳まで河北省のチームで卓球選手としてプレー。現役引退後に来日し、2008年に日本国籍を取得。「ミキハウス」のコーチに就任し、石川佳純を6年間、平野早矢香を1年半指導。15年4月から日本卓球協会に所属し、「JOCエリートアカデミー」のコーチに。現在は女子監督を務める。

6/2(金) 9:26配信 
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