【「たまげたなあ」は週刊現代の捏造だった】

(前略)
そして、リーグ戦の直前に、いわゆる「ビデオ事件」が起こる。部員の四人が、経済的な理由でアダルトビデオに出演していたことが発覚し、週刊誌に掲載されてしまったのだ。
私の任期中の出演ではなかったが、それでも何かとマスコミに話題にされた。
ある日、新座のグラウンドで練習を終えた私のところに、「週刊現代」の記者と編集者が来た。そして、一枚の写真を見せて、「この人、誰ですかね。監督」と何の説明もなく聞いてきたのだ。
私はうかつにも「うちの選手じゃないか」と答えると、記者は「監督、認められるんですね。ありがとうございました」という。
その写真は、ビデオのパッケージの写真を顔の部分だけ切り取ったものだった。
(中略)
その一週間前には早稲田大学のラグビー部員がビデオ出演にからんで記事にされていた。このまま放っておけば間違いなく同じような記事になると考えた私は、次の日に記者と編集者を呼んだ。
「事実を認めれば、記事には本人と立教の名前が特定されないように配慮する」という「週刊現代」の条件に乗ろうと思ったのだ。
ところがやって来たデスクと前日の編集者は、「もうこちらの取材は終わりました。斎藤さんと話すことは何もありませんよ」と言うではないか。

斎藤章児 『おれの野球では勝てないのか』 (上毛新聞の本 2015年)より