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◆プレッシャーと演技指導に耐えた経験値

 豊子を演じる藤野さんも子役出身。ただ、小学生時代はエキストラのみで、本格的な演技経験はありませんでした。そんな苦しい状況が続く中、14歳のときに受けた映画『ソロモンの偽証』のオーディションで、約1万人の中から主演に大抜てき。昨年も映画『クリーピー 偽りの隣人』で西島秀俊さん、竹内結子さん、香川照之らと共演したほか、今年冬にも『輪違屋糸里』で主演を務めるなど、まさに順風満帆です。

 経歴は華やかで可憐なシンデレラを彷彿とさせますが、藤野さんが評価されているのは、その対極にある素朴さと芯の強さ。時代や地域の設定を問わないだけに今後は、全国ネットのドラマ初出演となった『ひよっこ』を皮切りに、テレビでもその姿を見られるでしょう。

 八木さんも藤野さんも子役出身の女子高生ですが、「乳児のころから活躍」「突然の抜てき」という真逆の道のりを歩んできました。ただ、「大きなプレッシャーと厳しい演技指導に耐えてきた」という経験は共通していて、それが『ひよっこ』での縁の下の力持ちのような演技につながっている気がします。

◆ついに優子と豊子の見せ場が訪れる

 これまでは、行方不明の父親を探すみね子、女優の夢を追う時子、大食いや爆睡などで笑わせる澄子、唯一恋人がいる幸子がクローズアップされるシーンが多く、優子と豊子は聞き役に回っていました。

 しかし、29日からの第9週では、向島電機の経営危機をきっかけに、いよいよ2人にも見せ場が訪れます。いつも穏やかな優子と真面目な豊子が、それぞれ意外な騒動を起こすようですが、八木さんと藤野さんにとっては演技力の見せどころと言っていいでしょう。

 すでに「6人娘がバラバラになってしまったら……」とハラハラしている人も多いようですが、もしそうなったらネットを中心に“乙女寮ロス”が話題になりそうです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。