「チェキしませんかー。500円です。握手券もありますよー。よろしくお願いします」
ライブが終わると、アイドル自身がファンたちに呼びかける声が飛び交う。

活動を続けるには物販で稼ぐしかないが、人気がこれからというグループだと、ファンよりメンバーのほうが多いこともある。
メンバー間で売り上げを競争させる事務所もある。限られたファンをアイドルのほうが奪い合う構図で、“営業活動”は過熱しがちだ。

インスタントカメラのチェキでツーショット写真を撮る際に肩を寄せてくれたり、軽くハグしてくれたりすることもある。名前をすぐに覚えてくれ、「また来てねー」と満面の笑みで手を振ってくれる。
会いに行けるアイドル──。それが当たり前となったいま、彼女たちの売り物は、ちょっとした“恋人気分”を味わってもらうことなのかもしれない。

好きなグループに月20万円ほどをつぎ込むという30代の男性は、アイドルとの距離感が近くなっていると指摘する。
「握手しながらゆっくり話ができる。かつてのアイドルだったら考えられなかった。運営側の人とも顔見知りになるので、優遇してもらえる。

アイドルと本気で付き合いたいとは思わないが、友達感覚にはなれる。大事な友達が成長していくのを支えている気持ちなので、お金は惜しくない」

大半のファンは問題を起こさないが、中には暴走する人も出てくる。メールやLINEなどの連絡先を交換しようとするのは序の口。
本気で好きになる「ガチ恋」になって、自分から抱きついたり触ろうとしたりすることもある。

あるアイドルは衝撃を受けた体験を明かす。
「ライブの後の握手会の時に婚姻届を持ってきた人がいた。『あとは君が判を押すだけだ』と。さすがに気持ちが引いちゃいました」

自宅を割り出してプレゼントを送りつけるなど、ストーカー化するファンも相次ぐ。

ライブ会場近くで待ち伏せをした行為などがストーカー規制法の「つきまとい行為」に当たるとして、
警察から警告を受けた人もいた。逆恨みして、アイドルのブログに「生かしておけん」などと書き込んだ例もある。

運営側はそうした一部のファンを排除しようとするが、限界もある。都内の芸能事務所の経営者は、
「出入り禁止にした人のリストをほかの事務所と共有しているが、全員は把握できない。スタッフは少なく、ライブ会場から完全に閉め出すのは難しい」

と実情を明かす。結局、不審な人がいればすぐに通報してもらうなど、アイドルたちの自主的な警戒に任せているという。
運営側も大手から零細までさまざま。昨年には、地下アイドルと交際したとして、運営スタッフがファンから数百万円を脅し取る事件も起きた。

アイドルになりたいという女性の夢を食いものにしないよう、業界全体で改善すべき課題はたくさんある。

AERA dot. 5/26(金) 11:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170524-00000052-sasahi-ent&;pos=1