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2017.05.19

 出版、テレビが右肩下がりの中、2016年も興行収入が過去最高を更新している映画産業。
さらなる進化のカギを握るのは“ポスト宮崎駿”の存在だと目されるが、映画解説者の細野真宏氏は新たなキーマンの存在を指摘する。

 昨年の映画業界の好調は『君の名は。』の新海誠監督と、『シン・ゴジラ』の庵野秀明総監督という2人のクリエーターの存在が大きい。

 私は『君の名は。』公開前の映画評で新海監督が「ポスト宮崎駿」になれるかが焦点だと書いた。
日本で作品が軒並み興収100億円を超える大ヒットを続けるクリエーターは宮崎1人だけで、「ポスト宮崎」の存在が映画界を大きく左右するからだが、図らずも昨年の結果はそれを示している。

 「ポスト宮崎」は、『ヱヴァンゲリヲン』の庵野氏と『バケモノの子』『サマーウォーズ』の細田守監督の2人に新海氏が加わった形だ。

 ただ、実は、もう1人の有力なクリエーターが日本にはいるのだ。それが19日公開の『夜明け告げるルーのうた』の湯浅政明監督である。

 湯浅監督が本格的に覚醒を始めたのは、松本大洋原作の『ピンポン』のアニメ化だ。
テレビアニメの限界を超えたような完成度で、15年の東京アニメアワードで『アナと雪の女王』と並び「アニメーション オブ ザ イヤー」に選ばれた。

 湯浅監督が他のクリエーターと一線を画すところは、キャラクターの動きにある。
エッジの効いた動きを組み込みながら、「ファミリー向け」を目指して作った「初のオリジナル映画」が本作なのだ。

 『君の名は。』を『転校生』×『時をかける少女』×プラスアルファとすると、本作は『崖の上のポニョ』×『サマーウォーズ』×プラスアルファのイメージ。
脚本は『けいおん!』シリーズなどで有名な吉田玲子氏が手掛け、「心を閉ざした少年と不思議な人魚の女の子のひと夏の物語」をポニョ以上のリアリティーと躍動感で作り上げている。

 不安要素は、作画のパッと見がそこまで魅力的に見えない部分か。「動き」に最大の特徴があるので、実際に見るまでは良さが見えにくいのだ。

 今年のはやりのミュージカル要素もふんだんに入っていて、見終わった後には『ラ・ラ・ランド』や『シング』のように、斉藤和義の歌やテンポのいい音楽、ルーのダンスなどが頭に残り続けるだろう。

 105館と公開規模が小さすぎるのも厳しいがクリエーターの力がどこまで届くのか注目だ。