アイドルグループ乃木坂46のメンバー白石麻衣(24)の写真集「パスポート」(講談社)が2月の発売以来重版を繰り返し、累計発行部数21万部に。通常の写真集は発売後1カ月程度で落ち着く傾向にあるが、そんなデータを打ち破る勢いを今も保っているというのだから、これはもう社会現象だ。白石には「出版界の救世主」との呼び声もあるという。まずは出版関係者の解説。

「乃木坂のプロデュースはAKB48と同じ秋元康ですが、AKBが身近なアイドルなのに対して、乃木坂は高根の花がコンセプト。清純派の美形を揃え、これまでほとんど水着になることもなかった。それが今回白石が初めてランジェリー姿を解禁したんです。それでファンが飛びついた」

 それもヒットの要因だろうが、ヘアヌード写真集の大ブームを知る中高年世代からすれば、露出は控えめ。それに購買者には女性も多く、全てがランジェリー目当てというわけでもないだろう。では大ヒットの背景に何があるのか。

■「手の届かない憧れの存在」だった時代への回帰

 著書に「アイドル進化論」などのある社会学者、太田省一氏は背景をこう読み解く。

「ファンにとって手の届く、身近な存在というイメージのアイドルの流れが一段落して、次の潮流がはじまったのかも知れませんね。『アイドルは身近なもの』という流れは、AKB48やももクロがその中心を担い、ここ何年かのアイドルブームが定着したものです。その端的な表れがファン投票で選抜メンバーが決まるAKB総選挙。ただそうなるとファンの意思でアイドルの行く末を左右できるまでになり、その流れも行き着くところまで行った感があります。今回の白石さんの写真集のヒットにはそんな状況への反動というか、アイドルが手の届かない憧れの存在だった時代への回帰があるように見えます。山口百恵らの活躍した頃の清純派の復権といいますか、スターの神秘性とか、そういうものをアイドルに求める時代がもう一度巡ってきたようにも見えるのです」

 乃木坂を売るソニーは、一部門のCBSにかつて南沙織、山口百恵、キャンディーズらが所属していたことで知られる。その系譜からも、かつてのアイドルの王道、百恵時代の再来を予見させるという。

「戦後の日本社会が志し、推し進めてきた平等が浸透した現代には、右を見ても左を見ても同じという社会の画一化による息苦しさがあります。何でもフラットになってしまった分、突出した何かを求めたい。自分はなりたくても到底なれないような存在がいて欲しい。そうした希求のひとつの表れとして、アイドルは時代に機能します。何が起きても不思議じゃない混沌とした世界情勢のなか、圧倒的な存在の登場を時代が待っているような気がします」(太田氏)

 かつて山口百恵について「菩薩である」と書いたのは評論家の故平岡正明氏。果たして白石も菩薩のような圧倒的存在なのか、はたまた別のカリスマ登場の予兆なのか。たしかなことは時代が“素人”をウリにする開き直りにあぐんでいるということだ。

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