【大西純一の真相・深層】J1で下位に低迷している新潟と大宮が対照的な動きを見せた。新潟は三浦文丈監督が辞任して呂比須ワグナー監督が就任、新体制で立て直しを図ることになった。

一方の大宮は渋谷洋樹監督が続投、14日の仙台戦で逆転勝ちして最下位を脱出した。

 昨年、年間5位になった大宮は今季は苦戦が続いていた。開幕から6連敗、8戦勝ちなしとスタートでつまずいた。チームが勝てない時はメンバーを入れ替える。開幕からルヴァン杯を含めて15試合すべてスタメンが変わっていることがその象徴だろう。

それでも駄目なら戦術を変える。4連敗後、大宮は少し守備に重点を置くマイナーチェンジをしたが、結果は出なかった。それでも駄目なら監督を代えるしかない。

 大宮は4月30日の埼玉ダービーで今季初勝利、5月6日のアウェー札幌戦は敗れたが、仙台戦で今季2勝目を挙げた。札幌戦後、森正志社長は「大宮に帰って次の1勝へ向けて何をしなければいけないか、何ができるか、チーム全体の中で考えてみたいと思う」と含みのある発言をしていた。

しかし8日の練習後、渋谷監督は「新潟は監督交代になったが大宮はまだ。僕がやらせていただけますかとお願いした。簡単には責任逃れはしません。
僕が辞める事が責任を取ることだとは思っていない。14年J2に落ちた時も辞めることが責任を取ることだとは思わなかった。大宮にずっといるのだし、チームが勝利する事に100%力を使いたい。周りがいろいろ話しているかもしれないが、私は試合に勝利する事しか頭にない」と明かした。

選手時代から在籍し、歴史を知っている渋谷監督を簡単には交代させられない。「大宮のチームスタイル作り」という長期的なビジョンもあって、フロントは渋谷監督に懸けたのだ。

 思い出したのが、長沼健さんだ。97年W杯フランス大会アジア最終予選中で厳しい戦いが続いていた時、技術委員会の具申を受けて加茂周監督を更迭し、岡田武史コーチを監督に昇格させた。

当時、組織の長としての責任を追及された長沼会長は「任期満了を持って責任を全うする。それがサッカー界のやり方だ」と言っていた。つまり、辞めるのが責任を取ることではなく、目標に向かって最後まで全力を注ぐのが責任の取り方だという意味だ。辞めるよりも難しい選択かもしれないが、大宮の決断がどうでるか、注目してみたい。 (専門委員)

◆大西 純一(おおにし・じゅんいち)1957年、東京都生まれ。中学1年からサッカーを始める。81年にスポニチに入社し、サッカー担当、プロ野球担当を経て、91年から再びサッカー担当。Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、W杯フランス大会、バルセロナ五輪などを取材。

スポニチアネックス 5/18(木) 9:30配信
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