【ポジションTalk】金価格急騰、中銀の保有量は
 金(ゴールド)価格の上昇が止まらない。28日時間外のニューヨーク商品取引所(COMEX)で金先物相場の8月限は、一時1トロイオンス=1970ドル台を超えた。月初から約170ドル上げ、約9.4%の上昇率だ。

 金価格の変動要因として、需給バランスはもちろんのこと、ドル価値やインフレの動向、地政学リスクが挙げられるが、全てが買い方向に傾いている。また、世界経済の不確実性が増すなか、各国中央銀行による金購入も相場の大きな支えとなったか。

 日経新聞は1月末、世界の中央銀行による2019年の金購入量は650.3トンだったことを報じた。これは、1971年のドル・金兌換(だかん)廃止以降で過去最高だった18年からは1%少ないものの、過去2番目の大きさとのこと。中銀購入量は10年連続で純増となったもよう。

 ただ、国際通貨基金(IMF)が発表した2009年末と2020年6月の中央銀行保有量ベスト10を比較してみると、その顔ぶれは変わらず、しかも6カ国の保有量に変化なく、1カ国は減少していた。

 他3カ国のうち、ロシアが1692トン増で10位から5位となったのが目立つ。また、中国も894トン増(順位は6位のまま)だった。インドが98トン増で10位から9位に上昇している。他にも総保有量の順位は低いが新興国勢による購入が増えたようだ。

※以下が、直近の保有量順位となる。単位はトン

順位 国 金保有量 (2009年末からの増減)

1位・米 8134(-)

2位・独 3364(43減)

3位・伊 2452(-)

4位・仏 2436(-)

5位・露 2299(1692増)

6位・中国 1948(894増)

7位・スイス 1040(-)

8位・日本 765(-)

9位・印 655(98増)

10位・蘭 613(-)

 ロシア中銀はここ5年ほど400億ドルかけて金保有を拡大させた。これはクリミア併合で欧米から経済制裁を受けた対応措置と考えられる。中国もドル依存度を低下させるために金購入を続けたもよう。

 ただし、ロシアはこの4月から購入を停止した。もうお腹がいっぱいということか。金価格急騰で一番ニンマリしているのはロシアかもしれない。