聞いてくれるのかい?
先週、その問い合わせの家に行ってきたんや。
敷地は家5軒分ほどの土地にガレージ数棟あって10台以上のクラシックカーをコレクションしてるんや
電話してきたのは、そこの息子だったんや
70幾つになる父親がレストア作業で2000gtのボルトを折ってしまって、以来15年全くレストアが進んでいないんだって

その息子っていうのもちょっとオタクっぽいというか
ところどころアニメのセリフみたいな口調でしゃべるんや
年は20だっていうから、僕が難しい作業をやるメリットについての話の落としどころはつかないんや
一か所2万、2か所だから4万なら出せるってお
親父の誕生日がもうすぐだから、内緒で直してびっくりさせようってことらしいんや
ただ、持ち主に無断で勝手に修理して問題になったらどうするんだって気もするんや


しかしな、僕がこれからどんなに頑張っても手に入れられないであろう物や環境を
弱冠20歳にしてすでに持ってるこのクソガキにちょっとイラついていたんや
「これだけのものを持ってる方ってそうそういないですよ。」言うたら
「あったらあったで気苦労があるもんですよ」って言うんや。20のガキが。

50年前の車で、最後にそこのボルトを外したのが30年前
ボルトが折れてから15年。固着してるだけなら手間はかかるけど掘り起こせるけど
アルミのシリンダーヘッドのネジ穴が腐食してるかもしれないんだよな
そればかりは掘ってみないとわからんのだけど、それを20のガキに説明するのにほねが折れたんや


地面に置かれた長い木の板の上を歩くことは造作ないんだけど
それが地上数十メートルなら、途端にできなくなるんや
それをやるっていうならそれ相応の物が欲しいけど
だけどそれをこっちから言い出すわけにいかないんや
それどころか、「親父を思う孝行息子」のストーリーで
「感動した!いい話聞かせてもらった!金なんてセコいこと言わねえ」
って言わされそうになるんや。
この辺は金持ちの人をだまくらかすDNAなんやろな。ガキのくせに上手いんや


しかも親父に内緒でやる都合上、晴れた日の火曜か金曜の午前中だけしか作業チャンスが無いんや
とりあえずガキからは最低4万。あとは親父が意気に思っていくらか包んでくれるのを期待してたんや
その日はそんな話し合いだけで終わったんだけど、
後日電話が来て、「2000gtのオーナーズクラブの会員で機械関係の人間がいて、その人が挑戦してみたいというので
その人に見てもらうことにしました。ダメだったら、改めてお願いします」だってお
なめられてんなあと、自分のふがいなさを感じたんや


やっぱカネだよな。
自分の欲を否定して小さな世界で他人と関わらずにいれば気にならないけど
ちょっと他人と関わると途端に自分の貧しさを再認識させられる
ガキにだって舐めた真似されるし。


札幌市内だったんや、車で10分程や
しっかしほかの業者には見せたのか聞いたら
「家にお呼びするほどの方はこれまで居ませんでした」とか言うんや
いちいち嫌味なんや。生まれたときから金持ちで他人を値踏みして蔑む根性なんや
ああ羨ましい、妬ましいわあ