格差政策の被害者が右傾し政権支える悪循環

 世論調査に詳しい明大教授の井田正道氏(計量政治学)は、

「安倍政権の『後』が見えないことも、支持率が下がらない理由」と言うが、

実際、ポスト安倍と目される面々の動きは鈍い。

石破元幹事長も岸田政調会長も表立った倒閣運動を控えている。

政治評論家の山口朝雄氏が分析する。

「秋の総裁選は最大派閥の細田派を取り込んだ候補が絶対的に有利。

ポスト安倍候補は全員、その支持が喉から手が出るほど欲しい。

“安倍降ろし”に動かないのは、首相の出身派閥である細田派に歯向かわない方が得策との打算と狡猾が入り交じっているのでしょう。

“たなぼた”で総裁の座を狙う情けなさ。30年前の自民党なら即、政局ですよ。

他の議員も情けない。小選挙区制の弊害で、執行部に逆らえば次の選挙で公認されないなど仕返しを恐れて皆、保身に走る。

政権が死に体に向かうまで様子見ムードですから、政権側の危機感も薄れる。

世論の半数以上が見放した政権が安泰という状況は、国民にとって不幸です」

 若い世代ほど支持率が跳ね上がるのも、安倍政権の特徴だ。

共同の調査だと、60代以上の支持率は31・3%にとどまるのに、30代以下は49・3%と実に半数近くが支持しているのだ。

「若年層の高支持率は『新・階級社会』と呼ばれるほどに進んだ格差の固定化と無縁ではありません。

今や25〜35歳の労働者の4人に1人は非正規雇用です。

台頭する排外主義の背景には、低賃金にあえぐ彼らが日頃の不満のはけ口として求める側面もある。

中韓両国や北朝鮮に強気のポーズを続ける安倍首相が、格好の憂さ晴らしの存在となり、若者の支持を集めているのではないか。

『裕福な人々はより裕福に、貧しい人々はより貧しく』というアベノミクスの格差政策の“被害者”である若者が政権を支えているとは、皮肉です」(菊池英博氏=前出)