「では、売ってみたら?」
僕が呟くと笠原メイが振り向いた。信じられない、という顔をしている。
「あなたね」
顔は驚愕に満ち、目は猜疑を語っている
「まるで、シナモンパイにみりんをかけるような行為だわ、それは」
と言ってのける。
今の君の表情だって、端正な、そうシチリアのアマンダおばさんが愛情たっぷりに育てたような愛らしい表情が台無しに思えるよ、と僕は言いかけて黙った。だって、それをする必要が感じられなかったからだ。
やれやれ、と僕はウイスキーに手を伸ばす。今夜は長くなりそうだ