>>416
初めて意見が割れた瞬間に驚きながら、金貸しの男は急いで俺たちにポジションを持つように指示した。
複雑な気分だった。
勝てば大金が手に入るが、勝てば自分は不幸な男ではなくなってしまう。
負ければ保険金目当てで殺されるが、負ければ自分は不幸な男で居られる。
複雑だった。
結果はすぐに現れた、ものすごい勢いで下がり始めたのだ。
俺は増えていく金額に興奮して叫んだ。馬鹿な男は嗚咽を漏らしながら身体を震わせているようだった。
そして、その時が訪れた。
ゼロカット、馬鹿な男は無一文になった。
俺は雄叫びをあげた、命を賭けた戦いに勝利した事への喜びだった。
膝が崩れ落ち、喉が枯れるまで喜びの声をあげた。
自然にこぼれ落ちてくる涙を拭きながら、負けた馬鹿な男を見ていると、卒倒して倒れたようだった。哀れだった。
その時、部屋に奇妙な音が流れた。
先程も聞こえたゼロカットの音。
急いでチャートを見ると、勢いより下げた値動きは、更にそれ以上の速度で上げていた。
倍戻しだった。
俺は失望から倒れるように膝をついた。言葉が出なかった。
しばらく呆けたようにチャートを見ていると不思議なことが起こった。
俺と馬鹿な男の意見が割れた値段に戻ったのだ。
まさにレンジの起点だった。
俺は最後に大きな声で笑った。