>>367
「俺も鬼じゃない、お前たちに逆転のチャンスをやろうと思う」
金貸しの男はそう言った。
部下らしき男が金庫からブロックの札束を取り出す。
「お前たちのように馬鹿で不幸な奴は見たことがない。実はお前たちのどちらがより不幸なのか知りたいと思った。お前たちに500万ずつ貸してやろう」
金貸しの男は続けてそう言ったあと、俺ともう一人の馬鹿で不幸な男に500万を差し出した。
どうやら、俺たちは、どちらがより不幸で、どちらがより馬鹿なのか見世物にされるらしかった。
「お前たちは為替で失敗をした。そこで二人が為替で別々のポジションを持ったらどうなるか見たい。」
どうやら、そういうことだったらしい。
でかいモニターが置かれた部屋に連れられると、俺と馬鹿な男の二人にどちらのポジションを持ちたいか聞いてきた。
驚かされることに、俺と馬鹿な男は見事に同じ方向ばかりを答えた。
そした、相場はいつも違う方向に動いた。
今の今まで、一度も話したことのない馬鹿な男が長年寄り添った夫婦のように意気投合していた。
馬鹿みたいな光景に、その場に居る全員が笑っていた。
そんなことを繰り返していると、遂に意見が割れる瞬間が訪れた。
激しい値動きだった。
俺はSだと答えた、馬鹿な男はLだと答えた。