「レンジ」-レンジ太郎
俺は生まれてからずっと不幸だった。
なんとか人生を一発逆転させようと為替を始めてみた。
これが間違いだった。
馬鹿みたいに負けた、貯金額も全部、馬鹿みたいだった、いや俺が馬鹿だった。
金貸しの男に連れられて、事務所に監禁された。
その事務所には、明らかにカタギじゃない金貸し連中の中に、俺と似たような奴が居た。
俺と同じくらいに不幸で馬鹿なやつだった。
俺と俺と似たような馬鹿な奴に生命保険をかけられ、受取人は金貸しの名前になった。
もうこの世には何の未練も無かったが、すぐには死なせてくれないらしい。
生命保険をかけてからの期間が問題だったようだった。

生命保険をかけられて2年が過ぎた頃、金貸しの連中が現れた。
どうやら、命を取り立てにきたらしかった。
ああ、ようやく死ねる。そう思った。
久しぶりに連れてこられた事務所を少し懐かしく思いながら、部屋を見渡すと2年前の日に見た、俺と同じくらいで馬鹿で不幸な男が居た。