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入り口の階段のところで荷物をいったん置いて、傘をたたんでいると、友人の一人が「わぁっ」と悲鳴を上げた。

友人が視線で示す先、階段奥の駐輪場に続く通路を覗き込んでみると…あっ、と思った。

薄暗い通路の電灯の下に、女が一人立っているのだ。
30代か40代くらいで長い髪をしていて、全身黒尽くめだった。
髪も真っ黒なので、駐輪場の暗闇を背にすると白い顔面が浮かんでいるみたいに見える。

彼女はその場でじっと立ち尽くしたまま、こっちを見ている。
いや、顔と目はこっちを向いているが、私たちを見ているわけではなかった。ぼーっと遠くを見ているような感じだった。

これはびっくりするわ…と思いながら、私たちは小さく会釈して彼女に謝り、二階の友人宅に向かった。
友人の部屋に入るなり、私たちはさっきの女性の話をした。