「退陣」決断までの5日間、菅首相は何を考えていたのか
直前まで総裁選に闘志燃やしていた首相の心を折った「情報」
2021.9.5(日)紀尾井 啓孟
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66802?page=5
9月3日(金)「豹変と撤退」
3日朝、菅首相の動きに目立った変化はなかった。いつものように、8時前に官邸に入り、敷地内を散歩している。だが産経新聞によると、この日朝、政務秘書官らに「(総裁選には)出ない」と語ったという。2日夜に態度を180度変えたのはほぼ間違いなさそうだ。

 3日午前11時17分、悲壮な表情をした菅首相が自民党本部に入った。二階俊博幹事長と面会し、総裁選不出馬を伝えた。各種報道によると、二階氏は慰留をしたという。午前11時34分、臨時役員会が始まり、菅首相は総裁選不出馬の意向を表明し、約6分で退出した。
 官邸に戻った菅首相はすぐに記者団の前に登場したわけではない。菅政権を全力で支えてきた側近中の側近である武田良太総務相と真っ先に面会している。その後、河野太郎行革担当相とも個別会談した。この2人との面会は見逃せないポイントである。武田氏は党役員人事が行われれば、三役への起用が見込まれていた上、菅首相の主戦論を支持しつつ、何らかの形で軟着陸を図ろうと努力していた。河野氏についても、この場で菅首相が後事を託す意味で、総裁選出馬を後押しした可能性がある。
 菅首相は武田氏と河野氏との面会後、午後1時6分、官邸で記者団に対し、不出馬表明を行った。「コロナ対策に専念したいという思いの中で、総裁選には出馬をしない」「コロナ対策と選挙活動、莫大なエネルギーが必要なのでどちらかを選択すべき」。ややわかりにくい不出馬の理由は、党内や世論を踏まえて身を退いた??とは絶対に言わないという決意がにじんでいる。