しかし、昨年、発覚した愛媛県文書では、2015年2月に安倍首相が加計理事長と面会した席で「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と話していたことが記されており、安倍首相が加計理事長の計画にお墨付きを与えていたことが明確となった。

 にもかかわらず、安倍首相はこうした関係を一切認めようとせず、挙げ句、利害関係者である加計理事長とゴルフをしていたことの問題を、「ゴルフへの偏見だ!」と逆ギレしはじめたのである。

 あらためて振り返ろう。それは昨年9月、総裁選を控えて石破茂議員とともに『NEWS23』(TBS)に出演したときのこと。キャスターの星浩氏は加計問題を追及し、許認可を与える立場の安倍首相が利害関係者である加計理事長とゴルフや会食を
繰り返すことは適切ではないと指摘した。だが、安倍首相は「加計さんとは利害関係者になってからの付き合いではなく、学生時代からの長年の付き合いだ」と反論。星氏が“たとえば利害関係者である金融庁の幹部とメガバンクの頭取は学生時代から
の友人であってもゴルフをしちゃいけませんよ”とごく当然のツッコミを入れると、安倍首相はいつものムキになったときの口調で、このようにまくし立てたのだった。

「ちょっと星さん、ゴルフに偏見をもっておられると思います。いまオリンピックの種目になってますから。ゴルフがダメでですね、テニスはいいのか、将棋はいいのか、ということなんだろうと思いますよ?」

安倍首相が自分へのゴルフ倫理規定廃止の動きを取り上げ
 テニスだろうが、将棋だろうが、利害関係者と交友をもつことが問題だと言っているのに、「ゴルフは五輪種目だ!」「テニスだったらいいのか!」と問題をすり替えようとするとは……。この発言には多くの国民が失笑したはずだが、じつは
このとき、小学生のような幼稚な反論のあと、安倍首相はこうも述べていた。

「ただまあ、公務員の倫理規定のなかにはゴルフ入っていて、これはいろんな議論があります。ゴルフやっておられる方からはほんとうになくしてもらいたいと強い要請もあります。そういう色眼鏡で見られますから。ゴルフをやってるとですね、
何かよからぬことをしているのか、という誤解をおそらくもっているんだろうと思いますが、そうではないですよ」

 つまり、安倍首相はこのとき、加計理事長とゴルフをした自分が批判されているのは、利害関係者とのゴルフを禁止した国家公務員倫理規定が偏見を広めているせいだという、めちゃくちゃな主張を展開。ゴルフ議連から「なくしてもらいたい
と強い要請」があることまで紹介していたのだ。

 ちなみに、安倍首相はこのとき、こんな言い逃れもしていた。

「規定があればそれに従うのが当然のことであろうし、公務員には公務員の倫理規定がありますから、そのなかで動いている。でも、政治家の場合は、たとえば私、経済界の人たちともゴルフをします。それがよくてですね、こういう位の人なら
いいけども、あまり世の中から知られていない人とやってはならないということでおっしゃっているんであればですね、それは少し……」

 財界やメディア幹部とのゴルフ三昧が「良い」などと誰も言っていないが、その上、「あまり世の中から知られていない人とならダメなのか」というのは完全なはぐらかしだ。ここで星氏はすかさず「利害関係者であればということで言って
います」と切り返したのだが、すると安倍首相は、こう言い訳をはじめた。

「利害関係者ということであればですね、私は一銭も、その、政治献金を受けていませんから。で、そこではちゃんと私の分を払っています」

 何度でも言うが、ここで問題になっているのは「利害関係者」である加計理事長とのゴルフだ。もちろん、星氏も「許認可を申請する人と許認可をする人……」と応戦するが、安倍首相はいつものように「許認可を申請しているかどうか
というのは、私はそこでは実際ほんとうに知らなかったわけでありますから」と反論。そして、「あと、星さん、大切なことはですね、ここで本質論をお話したいと思うんですが、やはり政治というのはプロセスが透明で適切か、ということだ
と思います」と言うと、またも「議事録はすべて公開されている」という大嘘を平然と口にし、問題の焦点をずらしたのである。