ゴーンもエリート官僚 経営に君臨「フランス式」何が弱み
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 日産自動車のゴーン前会長の逮捕で、フランス政府が危機感を募らせている。マクロン大統領はアルゼンチンで安倍首相と会談、「日産、ルノー、三菱自動車」の3社連合を現状の枠組みで維持するよう圧力をかけたとされる。

 フランス政府はルノー株の15%を保有する筆頭株主。1996年に完全民営化されたあとも、経営に関与し続けてきた。同じようにもともと国営企業だったJR(北海道、四国、貨物は除く)の株式をすべて売却した日本とは民営化に対する考えが少し違うようだ。

「フランスは徹底したエリート主義で、グランゼコールと呼ばれるエリート養成校を出た人たちが、政府や企業のトップに君臨する仕組みになっています。最高峰はENA(フランス国立行政学院)で、ここからはマクロンやシラク、オランドら、多くの大統領が
出ています」と言うのは、欧州経済に詳しい同志社大教授の浜矩子氏。ゴーン容疑者も、グランゼコールの出身だ。彼らが社会を牛耳る強みはどこにあるのか。

「強いて挙げれば、自分たちは特別な責任を負っているという自覚を持ち、規律正しく節度ある態度で仕事を続ければ、ハイグレードな組織運営ができるというところでしょうか。ただし、一部に権力が集中してしまうため、ひとりが足を踏み外せば、オセロが裏返る
ように一気に真っ黒になってしまう恐れがあります。彼ら支配階級と労働者階級の大きな格差も、社会を断絶させています。世界中に別荘を構えるなど、逮捕されたゴーン容疑者のケタ外れでぶっちぎりの生活感のなさが明るみに出ましたが、非現実的な世界にいるのは、
どのエリートも似たようなもの。自分たちは違うんだという特権意識がはびこれば、国家も企業も停滞します」(浜矩子氏)

 アップル創業者のスティーブ・ジョブズも、マイクロソフトのビル・ゲイツも、大学を卒業していない。彼らがフランス人だったら、イノベーションは生まれなかったかもしれない。