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急落した半導体株 そんなに悲観せずとも(窪田真之<楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト>) 2018/11/06

私は半導体産業について、過度の悲観には及ばないと思っています。
データの一時記憶に使うDRAMも含めた市況悪化で、半導体メモリーへの依存が高い関連株の業績は徐々に悪化するでしょう。
それでも、メモリー以外の半導体は安定成長が続くと考えているからです。

現在、世界の半導体市場全体に占めるメモリーの比率は約35%(出荷額ベース)です。そこは要注意です。
ただし、残り約65%、メモリー以外の半導体は安定成長が続くと思います。

私は今後の半導体関連株は、メモリー関連株とそれ以外で株価が二極化すると予想しています。
日本の半導体製造装置メーカー、例えば、東京エレクトロンやSCREENホールディングスは、半導体メモリーへの依存が高いので、今から投資することはリスクがあると考えます。

■メモリー以外の半導体株は見直し余地

一方、メモリー以外の半導体の成長の恩恵を受ける半導体関連株は売り込まれた後に見直されて上昇する余地があると考えます。
具体的にいうと、シリコンウエハーで世界トップシェアの信越化学工業や第2位のSUMCOは安定的に利益を稼いでいけると予想しています。
また、自動車に使われる半導体で世界第3位のルネサスエレクトロニクスや、画像センサー(半導体)で高い技術を持つソニーも安定成長が期待できると考えています。

それでは、冒頭でも触れましたがシリコンウエハーで安定的に利益を稼いでいくと期待できるSUMCO株がなぜこんなに売られたのでしょうか? 
それは前回の半導体不況期である10年1月期〜12年1月期に3期連続で最終赤字に陥った過去(現在の決算期は12月期)があるからです。

SUMCOは前回の半導体ブームのとき、見込みでシリコンウエハーの大幅な増産投資を行いました。
そのため、半導体不況に入ると、シリコンウエハーが大幅に供給過剰となり、価格が大きく下落。
売り先のない在庫を大量に抱えたSUMCOの業績は急速に悪化したのです。

■シリコンウエハーは安定成長が期待できる

一方、信越化学は大幅な増産投資をしなかったので、半導体不況期にも安定的に利益を稼ぐことができました。
当時、信越化学の決算説明会でアナリストから「御社も大幅に増産しないと、シェアトップを取られてしまうかもしれませんが、いいのですか」と質問がありました。
そのとき、同社の金川千尋会長が「我が社は見込みで増産はしません。顧客が決まっている分しか増産しません」などと回答したのを覚えています。

今回の半導体ブームでは信越化学だけでなく、SUMCOも見込みでの増産はしないと明言していました。
従って、今後はメモリー市況が崩れてもシリコンウエハーが大量に余って在庫を抱えるということはないと思います。
つまり、シリコンウエハー業界は半導体サイクルの影響を大きくは受けずに、安定的に成長できると予想しています。