>>473
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57295?page=2
大恐慌からの回復期の米国では、主に金融政策の失敗(過度な引締めによる「オーバーキル」)
から一旦は克服したかにみえたデフレに再度見舞われたことがある(「1937年大不況」といわれる)。

今回の「金利差の逆転」で近い将来、株価が暴落し、米国経済がリセッションに陥るという懸念は、
まさにFRBによる過度の金融引締めによるより短い年限の金利上昇が「1937年大不況」に近い状
況をもたらすのではないかという懸念と共通する点が多いのではないかと考える。

そこで、1929年以降のイールドカーブデータで「2年-10年の国債利回り格差」を算出し、株価との
関係からその推移をみたのが図表2である。

1937年の株価暴落直前に利回り格差は急激に縮小しているが、最も縮小した局面でも利回り格
差は0.7%弱となっており、イールドカーブは「順イールド」であった。だが、この「順イールド」状態の中
でも株価は暴落した。

ちなみに、具体的には、株価は1937年4月から暴落局面に入ったが、1937年4月の3ヵ月物の国債
利回りは0.6%であり、事実上の「ゼロ金利」状態が継続していた。このことから、もし、今後、株価が
「1937年大不況」型の暴落に見舞われるとすれば、これは金利(差)で予想することは困難である
ことを意味している。

それでは、何が株価暴落、そして、その後の再デフレのトリガーになったのであろうか。

一つの可能性としては、「金利(イールドカーブという意味では「質」といってもよいかもしれない)」ではなく、
むしろ「量(マネタリーベース)」が減少局面に入った点ではなかったかと考える。

当時のマネタリーベースの伸び率と株価の関係をみると(図表3)、1937年3月より、マネタリーベースは
前年比でマイナス(-3.1%)に転じ、その後2桁台の減少率となった。この極めて急激な「(市場)流動
性」の収縮が株価暴落につながった可能性がある。

さらに1980年代以降をみても(図表4)、2000年、及び、2006年にマネタリーベースの伸び率はほぼゼロ
まで落ち込んでいる。

以上より、今後、株価の大きな調整があるかないかを考える際は、イールドカーブ(もしくは金利差)をみ
るよりもマネタリーベースをみた方が有益ではないかと考える。