野坂は、まだ生活に余裕があった時期に病気で亡くなった上の妹には、兄としてそれなりの愛情を注いでいたものの、家や家族を失い、
自分が面倒を見なくてはならなくなった下の妹のことはどちらかといえば疎ましく感じていたことを認めており、泣き止ませるために頭を
叩いて脳震盪を起こさせたこともあったという[6]。西宮から福井に移り、さらに食糧事情が厳しくなってからはろくに食べ物も与えず、そ
の結果として、やせ衰えて骨と皮だけになった妹は誰にも看取られることなく餓死している[7]。こうした事情から、かつては自分もそうであった妹思いのよき兄を主人公に設定し、